第163話 襲撃

文字数 855文字

俺はジメルナール・ザッドス。

ザッドス王国の王弟だ。



「誰にモノを言っている? 無礼者め、俺はジメルナール・ザッドスだぞ!」

 ふん、愚かなる民どもめ、金を払えだと!

 無礼者め、誰に申しているか解っているのか?

 斬り捨ててくれるわ!

 お、おい! お前達、何をする! 

 俺は此の不届き者に、罰を与えなければならんのだぞ!



「馬鹿か、お前は、ジメル!」

 くっ! 俺を馬鹿と呼ぶ此の男は、レイメール!

 我がザッドス王国の将軍の一人で、俺の従兄だ。



「聞いてくれ、レイ! 此の愚か者が、俺に金を払えと申すのだ! 如何思う?」

「当たり前だろう! 物を食ったら金を払う! 物を買ったら金で払う! お前は馬鹿か、ジメル? いつもでも子供の侭か、お(つむ)も?」

「誰が馬鹿だ、レイ! 偉そうに言うな、お前だって食い逃げしただろうが?」

「ば、馬鹿野郎! 10年以上も前のガキの頃の話などするな!」

「俺が言いたいのは、レイ! お前だけには言われたくないと言う事だ!」

「おいおい、子供みたいなことを。頼むから成長してくれ、ジメル! 此の通りだ!」

 レイが俺に頭を下げる。

 くっ! 仕方ない!

「亭主、助かったな! レイの頭で救われたな!」

 ふん、愚民が! 俺を誰だと思っているんだ!

 ジルクレール・ザッドスの弟だぞ!



「王弟殿下、準備は整っておりますが、国王陛下の裁可は頂いておるのでしょうな?」

 ふん、そんなものある訳があるまい。

 兄上は、慎重過ぎるのだ。

 だから機を逃すのだ。

 ベルウルを見ろ! テスラ王国の同盟国を簡単に落としたぞ!

 兄上に代わって、俺がザッドスを大きくしてやる!

「此れが、許可状だ! 文句はあるまい!」

 俺が部下に言って偽造させた国王の許可状だ。

「もう良いだろう! 出発だ!」







 俺はジメルナール・ザッドス。

 ザッドス王国の王弟であり、ザッドスの救世主と為る男だ。
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