第25話 2匹の大蛇

文字数 1,303文字

 僕は久し振りに

に会った。

 久し振りに会った母さんは、やっぱり良い匂いがした。

 僕に付いて来るって駄々を捏ねる母さんをなんとか説得した。

 近いうちに会いに行くって、母さんはなにかあれば呼ぶのよって言って、首飾りを僕にくれた。

 ありがとう、母さん。

 あ。忘れてた、レディ? あれ? 動かない、白目で気絶してる、大丈夫? 僕が母さんと喋ってる間になにがあったんだ? あ。動き出した。

「殿下、黄金竜は? 今ここに居ましたよね?」

 ああ、母さんのことか。どうしようかな、う~ん。よし。

「レディ、寝惚けてるの? さ、行くよ」

 こう言うことは、無視(スルー)だ。うん、完璧だ。

 目の前に大きな広場が出来てようが、惚けよう。

 そうしよう、うん。

 レディのジト目もなんのその、僕は行くよ!

『ぽ~ん♪ ...個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》のスキル《石化耐性Ⅳ》の習熟度レベルが上がりました!』

 石化耐性もこれで、よし! 次は深淵の森に移動だ。

 あ、あれ。レディが燃え尽きてる。

 なにがあったんだ? ま、無視(スルー)で。

 う~ん、深淵の森への道程はこれが一番最短だ。

 僕は鬱蒼とした世界樹の森を掻き分けて進む。

 あ、あれ? なんか日差しが無くなって、あれ。

 見上げる僕の目に、巨大な木の傘が映ってた。

「で、殿下。せ、世界樹です。ま、不味いですよ?」

 そうレディが教えてくれる。

 最近、レディの小物感が半端ない。

 え! えええええ。

 世界樹だって!? 

に怒られるよ、どうしよう。

 ねえ、シス?

『ビズ、手遅れよ。木の幹を見なさい、あれが《禍蛇》の片割れ《巨蛇》ヨルムガルドよ』

 え? 禍蛇って1匹じゃあないの、シス? 

 確か歴史と地理の先生からは1匹だって聞いたけど。

『《禍蛇》は《巨蛇》ヨルムガルドと《虚蛇》ウロボロスの番の蛇を言うのよ』

 僕の目に映る。

 巨大な木“世界樹”の幹に絡み付く巨大な蛇“巨蛇ヨルムガルド”。

 

が絶対近付いたら駄目、メって言ってた存在。

 ごめんなさい、母さん。

「で、殿下。十の災厄(アンタッチャブル)です、まだ気付かれていません。直ぐ逃げるべきです、殿下!」

 レディが慌て周章(ふため)いている。

 反って冷静になる僕。

 良い仕事(グッジョブ)だ、レディ。

 そして、シスが不思議そうに僕に言う。

『倒したら駄目なの、ビズ?』

 へ。あの凄く、凄く、凄ぉぉぉぉぉく大きい蛇さんを、倒す? なに言ってるの、シス。

 あ、あぁぁぁあ。

 余りのことにシスも壊れちゃったんだ。

 僕が確りとしないと、僕はまだ死ねないんだ、待っててねローゼ。

 お兄ちゃんが絶対助けるから!

 意気込む僕に“巨蛇ヨルムガルド”が宣告する。


『すいません、今立て込んでるので帰ってくれませんか?』

 僕の頭に直接念話が届く。

 なんて礼儀正しい蛇さんなんだ、僕は感動に打ち震えた。
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