第128話 化物皇子と奴隷少女

文字数 1,361文字

 僕達はアッバース王国を出発して、現在はアルグリア大陸の北北西に位置するイルガリア王国にいる。

 シス曰く、もう直ぐこの地域一帯で革命が起こるらしい。

 僕は皆と離れて単独行動を取っている。

 何故なら、大人数だと怪しまれるから、

 僕一人だと、子供だと思って人の目に止まり難いからだった。



『なあ、ビズ。俺等凄く注目されてるぞ?』

「え、確かに。どうしてだろう?」

『ビズ、頭に黒虎を乗せた子供は、珍しいからに決まってるでしょう?』

 シスが呆れたように、僕に告げる。

 えええ~、何故もっと早くに言ってくれなかったの、シス?

『ビズ、あなたでもそれぐらい解っていると思っていたからよ。何か文句ある?』

 いえ、ないです。

 何かシスのご機嫌が超斜めだ。

 こう言う時は、深くは聞かないようにしないと、大変なことになると僕は知っている。

「まあ、気にせずに行こう! 人知れずが最良だけど、別に困る訳でもないから!」

『くくく、ビズのそう言う処は、好きだぞ!』

 へへへ、褒められちゃった。

『褒めてないわよ、ビズ! いい加減にしなさい、物見遊山にきてるんじゃないのよ!』

 ごめん、悪かったよシス。

『良い、今から合う人物を仲間に出来れば、必ず私達の力になるはず! 気合いを入れて頂戴!』

 了解! 気合いを入れ直すよ!

 で、本当に凄いの



 今は凄くないけど、凄くなる素質が突き抜けているのよ!

 必ず登用して、ビズあなたが育てるのよ! 良い解った?

 うん、解ったよシス! だから鼻息を荒く喋らないでよ!

 僕には見えない筈のシスが、フンスと気合いを入れている姿が見える。



「あれ、ここだよね?」

『ビズ、どうしたんだ? ビズが間違う訳ないだろう?』

「エクス、場所はここで合っている筈なんだ。だけどここって娼館だよね? 師匠に連れて行かれて、後でビクターに大目玉を貰った処だ。はぁ、気乗りしないな~」

『ビズ、怒るわよ!』

 ごめん、ごめん。

 行くから、行けば良いんでしょ!



 コン、コン、コン、......

「おはようです! 誰か居ませんか?」

 僕が立派な扉を叩くと、中から声がして、小さな女の子が出てきた。

 その女の子は、お世辞にも綺麗とは言い難い、見窄らしい継ぎ接ぎだらけのボロを着ていた。

「おはようございます。営業時間は終わっていますので、今は対応出来る者がいないのです。申し訳ありませんが、営業時間内にお越し頂けますか? 失礼します」

 そう言って扉を閉めようとする女の子に、僕は声を掛ける。

「ああ、申し訳ない。でも僕が用事があるのは君なんだよ!」

「申し訳ありませんが、私は小間使いで、娼婦ではありません。またのお越しをお待ちしております」

 そう言って、扉を閉めようとする女の子に、再度声を掛ける。

「違う、違う! そう言う意味じゃないんだ! 僕は君を買いたいんだ!」


 僕はビクトリアス・ルブリタニア。

 エルブリタニア帝国第3皇子で、現在人材勧誘中だ。

 仲間の皆は僕の事を何故か、“残念な天然さん”と呼ぶ。

 不思議だ、僕のどこが“残念な天然さん”なのだろう?
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