第135話 激突!

文字数 1,135文字

 私はドロレス・ネナル。

 サルナ王国の将軍である。

 この度、西のシルフィ族のタックロ王国の侵攻軍を指揮している。

 西のシルフィ族の国々で、内乱が発生しており、その隙を突いて領土を拡張しようと言う事だ。

 我が王も、思い切った事を為される。

 領土拡張が成功すれば、天晴れと賞賛されるだろうが、失敗すれば、他国の内乱に乗じた卑しき者と非難されるだろう。

 だが我が王は、失敗を怖れない。

 動けるのに、動かない、判断を下せない事を恥とする。

 そんな王だからこそ、私も身命を賭して、今回の作戦は必ず成功させる!



「申し上げます、閣下! 我が軍の進行方向に旅装束の集団がおります、如何いたしましょうか?」

「退けば善し! 退かぬなら、叩き潰して進め! 大事の前の小事だ!」

 私は、兵は拙速を尊ぶの理から、そう判断した。

 だが、この判断は間違っていた。

 そして、我が軍を【悪夢】が襲ったのだった。



「申し上げます、閣下! 前衛軍が潰走しました!」

 はっ? 何を言ってるんだお前は?

 え? 旅装束の集団に攻撃を仕掛けたら、反撃された?

 え? 確か十数人と報告があったが、我の前衛軍は1000名だぞ?

 え? 化物だって? 確かにジャイアントが一人見えるが。

 え? 違う? ぐっわぁぁぁぁぁ~!



 はっ、我は気を失っていたのか? あれからどうなった?

 私は周りを見渡した。

 そして、愕然とする。

 見渡すばかりに、我が軍の将兵が薙ぎ倒されていた。

 だが、息はあるようだ。

 軍を立て直さなければ。

 何が起こったんだ?



「申し上げます、閣下! 我が軍の死亡者はありませんが、負傷者多数! このままタックロ王国へ進軍することは難しいかと!」

 副官からの報告に、驚愕する。

 死傷者が無しだと。

 あれほどの攻撃を受けて無し。

 旅装束の集団は、我が軍を薙ぎ倒した後、西へ去っていったらしい。

 くっ、何たる屈辱だ! 我が兵達も身体は大丈夫だが、心が折れている。

 圧倒的な強者と戦い、情けで命を救われたのだから。

 死んでいても可笑しくない死線。

 其れを越えるか、越えられないかで大きな違いが出る。

 失敗した、大事の前の小事と、旅装束の集団を侮った私の失態だった。

 大事の前の小事と、小事を注力しておれば、後悔は後には立たない。

 む、無念だ!

 しかし、我が軍の数は健在だ。

 再編し、立て直さなければ、この期に乗じて、我が国に攻め込んでくる者が出るかも知れない。





 私はドロレス・ネナル。

 サルナ王国の将軍であり、敗戦の責を取る者だ。
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