第82話 天空神

文字数 1,138文字

 我はライブラ。

 アルグリア12柱の1柱であり、英雄と秩序と法を司る天空神である。

 そんな我が管理する世界の1つに最近、変則的な(イレギュラー)な出来ごとが起きている。

 否、異例(バグ)なことでもあり、要注意である。

 幾千万の世界を管理する我にとって、たった1つの世界であっても見過ごすことは出来ない。

 我は秩序と法を司る天空神である故に、その職責を全う為ねばならない。

 その変則的な(イレギュラー)な出来ごととは、他の世界とは違った歴史を紡ぎ始めていることである。

 そして、その起点となる者が要注意監視対象者であるエルブリタニア帝国第3皇子、ビクトリアス・エルブリタニアだ。

 この者が、この世界での異例(バグ)である。

 この者を排除しても、この世界は既に他の世界とは異なった歴史を紡いでおり修正する手間を考えれば、この世界ごと破棄すれば効率が良いと我は判断する。

 しかし、創造神カリダド様はそれをお許しにはならないだろう。

 異なった世界もまた、カリダド様にとっては慈しみのある世界なのだから...。

 そこで、我は使徒の派遣を決断した。

 要注意監視対象者の行動を報告させる為に、適正がある者の1人に我の加護を与え使徒とした。

 その者からの報告に依ると、十の災厄(アンタッチャブル)のうち7体が要注意監視対象者に従っており、アルグリア大陸の歴史は予測不能な状態となっている。

 こんな状態が起こりえるのも運命と宿命を司る才能神ジェミニがいないからである。

 このような事案は本来はジェミニの管轄である。

 しかし、我らジェミニ以外の神々達が戯れた魂が、ジェミニの片割れであるフェートが大事に育てていた魂と知った時には既に取り返しが付かない状態であった。

 フェートは己の理により、我ら神々を滅した。

 カリダド様はそんな我らを再創造して、天界の掟に依りフェートは輪廻転生の輪に放たれた。

 しかし、もう1つの片割れであるカルマもフェートと共に輪廻転生の輪に飛び込んだ。

『我らは二人で一つの神である』

 そして、この天界(管理世界)は運命と宿命を司る才能神ジェミニを喪失した。

 しかし、運命と宿命は才能神が居なくとも紡がれなければならない。

 それ故に、ジェミニの双子神フェートとカルマの権能を現し身とした擬似神を

に封印して、簡易的に世界(アルグリア)の秩序を構築している状態である。

 我は才能神ジェミニに依り、1度滅された存在である。

 才能神は、魂を弄ぶ者を許さない。

 故に我は、異例(バグ)な魂であるビクトリアス・エルブリタニアを静かに見守るのである。
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