第99話 リゲル王国

文字数 1,201文字

 我はアルゲバル・リゲル。

 リゲル王国の国王である。

 我が国は西方諸国連合に入ったが不足の事態に依り、軍を派遣することが出来なかった。

 連合軍本部からは、第一等命令で接触禁止を厳命されていた件の皇子一行と想定外の接触をしたからである。

 ええい! 率直に言えば、馬鹿な侵攻軍指揮官が本部命令を無視して、エルバビロニア帝国第3皇子一行に攻撃をして返り討ちにあったのだ!

 この馬鹿の行動に依り、我がミゲル王国軍は敗走し、連合国軍に合流叶わなかった。

 なんたる失態だ!

 我が妹婿でも庇いきれない失態だ!

 そして、事もあろうに妹婿は、その事実を連合軍本部に隠蔽していた。

 ぐっぎぎぎぎぎ! 我が国の面目は丸つぶれだ!

 その事実を知ったのは、敗走した軍の者でも馬鹿の妹婿でもなく連合軍本部からの特使だった。


「この度の虚偽の報告に依り、連合国軍は多大な被害を被った。申し開きがあればお聞き致します」

 知らなかったでは済まない。

 軍を纏めることも出来ない愚か者の烙印を自分から押すほど我は馬鹿では無い。

 全て我が国の責であると謝罪した。

 その不利益を我が国で補填出来るものならばしなければいけない。

 曖昧な態度は不信を招く。

 え、スピカのプロピーナ騎士団が敗北しただと?

 え、件の皇子一行に依ってだって、...何故情報開示を怠ったのかだって?

 くっ、あの馬鹿が!

 全て我が国の不手際であると認め謝罪した。

 え、何故一方的に謝罪するのかだって?

 決まっているだろう!

 アッバース王国に対して、外交の妙など意味が無いからだ。

 還って我が国の非となる。

 これが解らない馬鹿のお陰で我が国は存亡の危機に直面していた。

 西方連合軍に依って、西方三国は倒され新たに古のクローマ王国が再興する。

 その華々しい戦果に泥を塗った全責任を我がリゲル王国は課せられようとしているのだ。

 ここで反論しても意味は無い。

 西方連合軍がどう思うかでは無い。

 アッバース王国が、どう

するかだ!

 ああ、あの馬鹿が恨めしい!

 絶対負けるはずの無い戦いで、武功を挙げさせようと妹に懇願に負けた我の愚かさよ...。

 全て我の判断の誤りからだ。

 これからは、肉親の情を廃さなければならない。

 肉親の情に依って、国を割ったクローマ王国の二の舞はご免だ!

 馬鹿には、今回の責を取って退場して貰う!

 我が国が被る非は如何ほどのものになるか...。


「申し上げます! リゲル侵攻軍が殲滅されました!」

 は? え? 馬鹿が再度、件の皇子一行を襲った?

 殲滅?  え、誰一人生き残りがいない?

 ...我が国の三分の二の兵力が無くなった。


 我は戦後の賠償と人的損害の大きさに意識を失った。
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