第97話 シリウス王国

文字数 1,341文字

 我はプラキオス・シリウス。

 シリウス王国の国王である。

 今度の西方三国包囲作戦に於いて、我が国はミダス王国との国境での軍事演習と言う名の囮を務めた。

 ミダス王国は、我が軍の押えに防衛戦士団を投入した。

 我が国境に到着すると同時にデネブ王国がミダス王国に侵攻する。

 こんな悪辣な謀りごとを巡らし実行に移すとは、アッバース王国には頭が下がる。

 かの国が独善的な国であることは周知の事実。

 しかし、アッバース王国の独善には規範がある。

 それ故に、周辺国家はアッバース王国を信用している。

 その独善的な規範に沿って軍事行動を行えば、何ら問題は無い。

 クローマ王国の再興か...西方諸国6カ国が加担するこの作戦に於いて、万が一の失敗も起こるまい。

 それに、あの不気味な男。

 アーク傭兵騎士団団長であるドリトス・トルクス。

 アッバース王国の威を借る狐と侮るべからず。

 我ら西方諸国6カ国を纏め上げ、今回の作戦の実質的司令官。

 古のクローマ王国が国を割り800年、クローマ王国の長子ミルテッド・クローマに付き従ったトルクス家。

 その末裔である男。

 あの男の目が恐ろしい。

 全てを見透かすか如く、戦略を的確に練り上げ実行する男。

 あの男には未来が見えるのかも知れない。

 たった1人の男に恐怖する時が来るとは思わなんだ。

 アーク傭兵騎士団。

 アルグリア大陸の戦乱あるところに必ず出現する傭兵騎士団。

 その傭兵騎士団を統率する男。

 あの男には注意が必要である。

 思わぬところで足元を掬われかねない。


「陛下、申し上げます! 現在ミダス王国へ進軍中であったシリウス王国軍5000が敗走しました! 敵は西方諸国連合本部から接触禁止の第一等命令があったエルバビロニア帝国の第3皇子が率いる集団です!」

 はっ? 確か十数人のお忍びの集団と報告にあったが?

 えっ? 十数人で間違いない?

 うん? では、我がシリウス王国軍5000は、たった十数人に敗れたのか?

 その通りって! そんな馬鹿なことがあってたまるか!

 えっ? 我が国だけではないって?

 スピカ王国のプロピーナ騎士団も敗走?

 カペラ王国のカペラ遊撃強襲部隊も敗走?

 うん? 敗走?

「軍が壊滅したのではないのか? 我が軍は如何致しておる?」

 えっ? 装備以外は軽傷者のみで死亡者はミダス侵攻作戦時のみで、件の皇子では誰一人死んではいないだと?

 つまり、生かされたと言うことか?

 たった十数人に我が国の総兵力が敗走した...ゴクリ。

 エルバビロニア帝国とは化け物の集団なのか?

 敢えて殺さずに生かすとは、我が軍はエルバビロニアが攻めてくれば戦わずしてその軍門に降るやも知れん...。

 えっ? 我が国を目指して移動している模様って?

 ええい! その集団に接触を禁ず! 特等命令を国境及び全域に布告せよ!

 触らぬ神に祟りなし。

 件の皇子一行には関わらない。

 しかし、我がシリウス・スピカ・カペラの軍が少数に撃破された事実は隠せない。

 西方諸国連合本部は、如何致すのであろうか?
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