第7話 計画

文字数 1,281文字

 私はエドバルト・ナインテール。

 む、む、無職ではなくなってしまった。

 元無職だ。

 殿下の双剣の師匠になって、はや1ヶ月。

 私の必殺技まで完全に再現するとは。

 殿下。恐ろしい子。

 違う。違う。

 私は、毎日ゴロゴロしたいんだ。

 嫌だ。無理だ。働きたくない。

 こうなったら、あの計画を実行するしかない。

 私は、自分が所属している

を動かすことを覚悟する。

 くっ。

 この手を使うと、

無職でなくなってしまう。

 だが仕方ない。

 殿下から、私の剣術指南役をお役御免にしてもらうには。

 計画は順調に進んでいる。

 殿下が私の道順と手順で離宮、城を簡単に抜け出した。

 おい。衛兵。

 お前ら仕事しろ。

 自分を棚に上げながら、警備に突っ込んでしまった。

「殿下。敵は強敵です。必ず守って下さい。命に関わります」

 殿下に私を、お兄ちゃんと呼ばせ、殿下を弟と呼ぶことを確認して、今日の釣り場()へ殿下を誘い出した。

 殿下も男だ。

 このサキュバスの巣窟である娼館で、彼女達の

で、殿下に私を理解頂き、お役御免にしてもらう。

 完璧だ。

 最悪失敗しても、殿下を離宮から連れ出した罪でお役御免。

 まさに、完璧だ。

 これで無職に戻れる。

 サキュバス達に囲まれ男の桃源郷で、意識を蕩けさせて決着(フィニッシュ)だ。

 あれ。なんか様子が変だぞ。

 サキュバス達の方が蕩けているような。

「あら。エルさま。いらっしゃいませ」

 ダリアが来たか。

 よし。これでなんとか。

 持ち直すんだ。

 部屋へ入ると同時にダリアが私に一発かまし、私を突き飛ばす。

「この変態が! いつまで待たせるの?」

 うぉう。最高だ。

 ダリア。

 私は鞭で打たれながらも歓喜に包まれたように振る舞う。

 痛い。痛い。ダリア、強く打ちすぎだ。

 痛い。ダリア、やり過ぎだ。

 痛い。ここまでするのか。

 さすが、ダリア。徹底してる。

 さすが、一流(プロ)だ。

「こんな変態にこんな可愛い弟がいるなんて、お姉さんビックリしたわ」

 ダリアのサキュバスの眼から逃げられる男はいない。

 彼女の虜になって、私をお役御免にしてくれ。

 そう願いながらダリアの人間椅子と化した私は、自由になれる喜びにうち震えていた。

 すると殿下が、ゆっくりとダリアに近付いて行く。

 よし。掛かった。

 私は、勝利を確信した。

「おい...僕の奴隷になれ!」

 殿下がダリアの腰に手を回し、彼女の顔を見つめながらそう呟くと、

「は...はい」

 と熱に魘されたようにダリアが、殿下に(かしず)く。

 え。何が起こったの?

 私は人間椅子のままで思考停止したのだった。


 離宮では、いつも通りに何ごともなく時が過ぎていた。

 何故なら第3皇子はいつも一人で部屋にいて、誰も近付かないのが基本(デフォ)だからだった。
 
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