第141話 路傍の化物
文字数 1,191文字
私は、バサアン・ヌルク。
ミルナ王国の武将だ。
現在、隣国サルナ王国へ進軍中である。
タックロ王国など、シルフィ族の国々で内乱が起こっており、其の備えとして国境付近の防衛を行っていた。
其処へ王からの急使が来て、状況は一変した。
国境防備に500名を残し、2000名でサルナを落とすべく行動を開始した。
途中で、500名の援軍が、我が軍に合流した。
何でも、サルナ王国は、漁夫の利を得ようとタックロ王国へ進撃を開始し、不測の事態で壊滅したらしい。
其の不測の事態とは、何なんだ?
急使に問うも、答えが不明瞭でよく解らない。
旅の集団十数人に、サルナ王国軍3000名が壊滅させられた?
おいおい、嘘を付くなら、もっと増しな嘘を付け。
何処に、300倍の敵を倒す奴ら居ると言うのだ?
馬鹿も休み休みに言え!
私は、急使の程度の低さに憤慨した。
だが、其れが、私の身に最悪の形で反って来たのだった。
「ヌルク様、前方軍より伝令がありました! 十数名の旅の者達が、我が軍の進路を阻んでおり、直ちに立ち退かせるので、暫し猶予を頂きたいとの事です!」
ふむ、旅の者達か。脅かすな、……う、うん? あ、あれ?
私は既視感を覚えた。
いや、違うな。
確か同じ内容の話を、聞いた覚えが、……!!!
「ま、待て! 交戦はするな! 私が見聞に行くまで、何もするな!」
私の言動が余りにも唐突だったのだろう、報告者が戸惑いながらも言いにくそうに言い出した。
「ヌルク様、既に交戦状態に入っている頃かと? 旅の十数人の者達ですから、造作もなく排除出来ますが? ど、どうされました、ヌルク様! ヌルク様?」
私は、其の報告を聞きながら、頭が混乱を来し、何を言われているのか、どうかも判断出来ない状態になった。
落ち着け、まだ、其の集団が、件の集団だと決まった訳ではあるまい。
私は落ち着きを取り戻そうと、目を瞑り、動悸を整えようとした。
「申し上げます! 前衛軍より急使が! 前衛軍、交戦中、敵は二人! 至急応援を乞う! 至急応援を乞う! との事です! 如何いたしましょうか、ヌルク様?」
へっ? 何だって?
ゴクリ、……
其れからの記憶が、私には無い。
気付いた時には、負けていた。
我がミルナ軍2500名が、鎧袖一触で蹴散らされた。
其れも、たった二人に。
悪夢だ、悪夢以外に無い。
だが、現実であり、事実を見なければ、其れに対応しなければ死ぬ。
私は重く怠い身体を動かしながら、敗残の軍勢を再編するのだった。
私は、バサアン・ヌルク。
ミルナ王国の武将だ。
勿論、帰国後の身分は不明だ。此れだけの失態。只で済む筈も無い、……
ミルナ王国の武将だ。
現在、隣国サルナ王国へ進軍中である。
タックロ王国など、シルフィ族の国々で内乱が起こっており、其の備えとして国境付近の防衛を行っていた。
其処へ王からの急使が来て、状況は一変した。
国境防備に500名を残し、2000名でサルナを落とすべく行動を開始した。
途中で、500名の援軍が、我が軍に合流した。
何でも、サルナ王国は、漁夫の利を得ようとタックロ王国へ進撃を開始し、不測の事態で壊滅したらしい。
其の不測の事態とは、何なんだ?
急使に問うも、答えが不明瞭でよく解らない。
旅の集団十数人に、サルナ王国軍3000名が壊滅させられた?
おいおい、嘘を付くなら、もっと増しな嘘を付け。
何処に、300倍の敵を倒す奴ら居ると言うのだ?
馬鹿も休み休みに言え!
私は、急使の程度の低さに憤慨した。
だが、其れが、私の身に最悪の形で反って来たのだった。
「ヌルク様、前方軍より伝令がありました! 十数名の旅の者達が、我が軍の進路を阻んでおり、直ちに立ち退かせるので、暫し猶予を頂きたいとの事です!」
ふむ、旅の者達か。脅かすな、……う、うん? あ、あれ?
私は既視感を覚えた。
いや、違うな。
確か同じ内容の話を、聞いた覚えが、……!!!
「ま、待て! 交戦はするな! 私が見聞に行くまで、何もするな!」
私の言動が余りにも唐突だったのだろう、報告者が戸惑いながらも言いにくそうに言い出した。
「ヌルク様、既に交戦状態に入っている頃かと? 旅の十数人の者達ですから、造作もなく排除出来ますが? ど、どうされました、ヌルク様! ヌルク様?」
私は、其の報告を聞きながら、頭が混乱を来し、何を言われているのか、どうかも判断出来ない状態になった。
落ち着け、まだ、其の集団が、件の集団だと決まった訳ではあるまい。
私は落ち着きを取り戻そうと、目を瞑り、動悸を整えようとした。
「申し上げます! 前衛軍より急使が! 前衛軍、交戦中、敵は二人! 至急応援を乞う! 至急応援を乞う! との事です! 如何いたしましょうか、ヌルク様?」
へっ? 何だって?
ゴクリ、……
其れからの記憶が、私には無い。
気付いた時には、負けていた。
我がミルナ軍2500名が、鎧袖一触で蹴散らされた。
其れも、たった二人に。
悪夢だ、悪夢以外に無い。
だが、現実であり、事実を見なければ、其れに対応しなければ死ぬ。
私は重く怠い身体を動かしながら、敗残の軍勢を再編するのだった。
私は、バサアン・ヌルク。
ミルナ王国の武将だ。
勿論、帰国後の身分は不明だ。此れだけの失態。只で済む筈も無い、……