第20話 今だ!

文字数 1,729文字

 衝撃の事件だった。

 僕がお漏らしするなんて、なんて日だ! そして、その事件のあった日の深夜に僕は離宮を脱け出した。

 今だ! 僕は感じたんだ。

 ビクターが、

で当分出仕できないって聞いて感じたんだ。

 でもビクター、大丈夫かな? お大事にね。

 よし! (オーガ)の居ぬ間にって言うからね。

 僕、脱け出すよ。

 僕は強くなるんだ。

 流石はナインテール先生。

 先生の言った通りの道順と手順で、衛兵をやり過ごす。

 僕は、握りしめていた手帳を見る。

 この手帳には、ナインテール先生から教えてもらった

書き込んでいる。

 ナインテール先生は、他の先生と違って変わった教え方を僕にする。

 他の先生の授業では黒板に先生が書き込み、僕が紙に書き写して、ものごとを覚えていくんだ。

 でもナインテール先生は剣の稽古以外の授業は、いつも外で先生が横になって、ゴロゴロとしている。

 僕は傍で、先生の言葉を手帳に書き写す。

 先生はいつも常識に囚われるな、って言う。

 見取り図も地面に先生が書き込んだものを、僕が

しながら書き写した。

 う~ん、う~ん、凄く難しい謎、謎な授業で気が抜けない内容だ。

 僕は今、深夜の城下街を全力で走っている、先生の道順と手順で。

 なんと帝城のある一の郭、貴族街のある二の郭、そして城下街のある三の郭を脱け出し、帝都エルシィの大きな外壁門を越えた。

 凄い、凄すぎるよ先生。

 一体どうやって調べたの? 先生、ありがとう。

 僕は先生の教えを胸に、今飛び出します!

 行き先はもう決まっている。

 シスと話し合って決めたんだ。


「はっ!」

 深夜の道なき道には、魔物が昼間より多くいる。

 そんな魔物を倒しながら僕は真っ暗な闇夜を、まるで

のように駆け抜ける。

 だって、本当に昼間の明るさで僕の目には見えるんだ。

 シスの話では、僕の目の力なんだって。

 でも僕は自分の目が嫌いだ、他の人と違う色だから。

 なんでも僕のお祖父ちゃんの、その又お祖父ちゃんの、その又お祖父ちゃんの、その又お祖父ちゃんと同じ目の色なんだって。

 そのお祖父ちゃんはエルブリタニア帝国初代皇帝で、今の帝国を作った偉い人。

 だから僕も同じ目を持っているから凄いんだって、一体何が凄いの? 教えてよ僕に? 

 凄いのはお祖父ちゃんで、僕じゃないよね? 

 目の色だって、同じだから僕もお祖父ちゃんと同じことができるの? 違うよね? 

 ナインテール先生はいつも僕に言うよ? 凄く切れる良い剣も使い手次第だって! 

 お祖父ちゃんは目が凄いんじゃなくて、お祖父ちゃん自身が凄いんだよ! 

 だから僕も凄くなる! 僕は手に入れる! 決めたんだ! 

 ナインテール先生と約束したしね。

『ぽ~ん♪ ...個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》の個体レベルが上がりました!』

 また個体レベルが上がった! シスも何故か嬉しそうだ。

 僕に倒された魔物が、

に回収されて消えていく。

 これも僕の

、シスが教えてくれた。

 そして、



 何故か頭の中で、地図が浮かぶ。

 その地図の赤い点がアクティブモンスターで、黄色い点がパッシブモンスター。

 アクティブモンスターは僕がなにもしなくても攻撃してくる魔物で、パッシブモンスターは僕が攻撃しないとなにもしてこない魔物。

 シスはなんでも知っている、物知りさんだ。

 僕は、行き先までの赤い点を全て倒す。

 僕には、時間がないんだ。

 何故なら、もうすぐ凄く酷いこと、悲しいことが起こるんだ。

 だから、僕...強くなるんだ!


 シスは、物知りさんだ。

 なんだって、知っている。

 この先に起きる

だって、知っている...あと数ヵ月後に僕の妹が死ぬ。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ! 

 僕は、妹を助けるんだ! 

 まだ1度も会ったことのない、僕の妹を! 

 必ず助けるんだ!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み