第24話 驚愕

文字数 2,030文字

 俺はレディオス・ベクシス。

 諜謀機関『隠者の手』の上級工作員だ。

 そんな俺が何の因果か帝国の第3皇子、ビクトリアス殿下の家出の共犯者をしている。

 ふふふふふ、と見せ掛けて承った任務を継続している。

 情報は逐一使い魔で本部へ送っている。

 ふふふふふ。完璧だ、そう完璧だ。

 やはり思考こそが至高。ふふふふふ。

 親父冗談(ギャグ)も冴え渡ってるぜ。

 俺の願いを叶える者だと...巫山戯るな...俺の願いは......。

 ぎゃあああああ! 殿下! そいつはパラライズモンキーです! 

 ぎゃあああああ! 殿下! そいつはポイズンウルフです! 

 ぎゃあああああ! 殿下! そいつはスリープバードです! 

 無茶苦茶だ、そう無茶苦茶だ。

 否、馬鹿だ、そう馬鹿だ。

 やはり、馬鹿は馬鹿。ふふふふふ。

 親父冗談(ギャグ)も浮かばない...。

 殿下は何事も無茶苦茶だった。

 否、馬鹿だ。

 そう殿下は正真正銘の馬鹿だ。殿下? 考えるって言葉を知っていますか? 

 その意味を理解していればパラライズモンキー・ポイズンウルフ・スリープバードを狩ろうしませんよね? 

 何故そんな状態異常の特性を持つ魔物

の集団に無警戒に突っ込んで行くのですか? 

 もう少し考えましょうね。

 え。考えてるから狩ってる。

 はい、そうですね。

 解りました、殿下が馬鹿だと言うことが。

 俺だけが精神的にも物理的にもボロボロになって目的地に着いた。

 うん、目的地に着いた? ぎゃあああああ、ここは、こ、ここは世界樹の森。

 あ、あああああ。やっぱりここか、ここ数日、思考停止してた俺の馬鹿。馬鹿、馬鹿、馬鹿。ガックリ。

 この時期の世界樹の森はヤバいんだ。

 でも殿下との

がある。

 なのでどんなに異常で常軌を逸する行動でも質問は出来ない。

 く、計ったな殿下。

 殿下は意図的に俺に情報を渡さない。

 く、糞、糞、糞っ垂れが! 心の中で殿下に罵詈雑言を浴びせ掛ける俺。

 駄目だ、駄目だ、駄目だ。

 は。冷静に、冷静に、冷静に。

 待て、待て、待て。

 こう言う時こそ考えろ、考えろ、考えろ。

 は。おかしい、おかしい、おかしい。

 ここは世界樹の森。俺達が帝都を出てまだ3日だ。

 通常ここまでは

1週間以上は掛かる道程。

 それをあれだけの魔物を狩りながら3日? 否、否、否。無理でしょ、絶対。

 でも3日で着いた。

 あああああ。無茶苦茶、無茶苦茶、無茶苦茶だ。

 殿下、あなたは一体“何者”なんだ?

 そうだ、考えろ、考えろ。

 違和感、そう違和感だ。

 ここまでの道中、俺はいつも以上に調子が良かった。

 だが、本当にそうか? 

 確かに多くの魔物を倒したので、その

を俺が取り込み、その

分俺が強化された事は解る。

 が、だ。本当にそうか? 

 俺は

思考の世界に潜り込む。

 何故あれだけ大量の魔物を短時間で狩り、尚且つ3日で1週間以上掛かる道程を踏破できたか。

 殿下は帝都外に出るのは生まれて初めて、ではどうやって

目的地『世界樹の森』に辿り着けたのか。

 殿下に接触した時に俺が倒したマッドウルフが1匹だけ消えずに残り、それ以降に俺が倒した魔物は消えていった。

 勿論、殿下が倒した魔物は消えていってる。

 殿下の仲間になる条件は1つだけ、質問をしないこと。

 それだけだ。

 いつ仲間から抜けても良い、だけどどんなに不思議でも質問しないこと。

 くくくくく。面白い、面白い、面白いぜ殿下。

 

が俺の思考の中で具現化するが、情報が足りない。殿下の

が、あの初代皇帝と同じ紅眼の力なのか? また違うものなのか、情報が足りない。

「ギャアアアアアオス!」

 ん? 何だ? この鳴き声は。

 は。思考が加速し交錯(リンク)する。

「で、殿下! ひ、飛竜です! お逃げ下さい、ここは俺が囮に!」

 俺は咄嗟に殿下に叫び、最善の道を示す。

 

飛竜が獲物を求めて世界樹の森に飛来する。

 だから、冒険者も探索者もこの時期の世界樹の森には近付かない。

 ......だが、俺達の前に降り立った“存在”が俺の思考の答えを大きく否定する。

「ち、違う。ぜ、絶対違う。う、嘘だぁぁぁぁあ!」

 俺は俺の思考が導きだした“答え”を叫びながら拒絶した。


 アルグリア大陸には触れてはいけない十の災厄(アンタッチャブル)が存在する。

 その存在の正体は10個体の災厄級の魔物であり、

と呼ばれ決して触れてはいけない存在として人類の脳髄に刻まれていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み