第30話 深淵の森

文字数 1,281文字

 僕達は世界樹の森から、エクア母さんがいる金剛山に寄って今は深淵の森にいる。

 鬱蒼とした雰囲気の森だけど、なんか気持ち悪いな。

 魔素が濃いんだけど、世界樹の森とは違った種類の魔素だ。

『ビズ、それは闇属性の魔素が強いせいよ。

色々と修得するの、良い?』

 うん、僕解ってるよシス。

 よーし、いくぞ。

 僕は狙っている魔物を頭に浮かぶ地図で

をして、



 へー、この蝙蝠さん達だー。

 えい、とう、やー。

 僕達は狩り続けた。

『ぽ~ん♪ ...個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》のスキル《盲目耐性Ⅳ》の習熟度レベルが上がりました! ...』

『...ぽ~ん♪ ...個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》のスキル《沈黙耐性Ⅳ》の習熟度レベルが上がりました!』

 順調に予定通りのスキルを修得していく。

 あ、あれ。

 僕は予定通りで良いけど、レディは大丈夫? ねえ、シス?

『彼は既にスキル枠が

だから大丈夫よ。これ以上スキルは修得出来ないわ。それに彼にはもう

わ』

 そうなんだ、レディは凄い。

 スキルが必要ないなんて、凄い。

 そうそう、レディと言えば最近? ヨルト父さんとウロス母さんに出会ってから雰囲気が変わった。

 前にあった馬鹿っぽい小物感が無くなった。

 不思議に思ってレディに聞いたら、「俺には解るんです」って言うばかり。

 う~ん、う~ん、う~んと。

 まあ、レディが良いなら良いことだ。

 うんうん、うん? 何が? 何が解るの、ったくレディは礼儀作法が駄目駄目さんだ。

 答えは明確に主語を付けないと意味が伝わらない、礼儀作法の先生が言ってたんだから間違いない。

 ったく大人なのにレディには常識がない、ぷんぷんぷん...シスに叱られた。

 え、えええええ僕が悪いの。

 じゃあ礼儀作法の先生が間違ってたの? え、礼儀作法は正しいこと? じゃあなにが悪いの? え、そう言うことじゃあない? 他人に自分の考えを一方的に押し付けるのは余り褒められたことじゃあないって、しゅーん。

 レディにはレディの常識がある。

 僕にも第3皇子の立場があるようにレディにはレディの立場、立ち位置がある。

 彫刻を正面から見るのと真後ろから見るのとでは見え方が違う。

 だって立ち位置が違うから。

 立ち位置が変われば常識も変わる、だって見え方が違うから。

 皇子と間者さんとは立ち位置が違うから、僕の常識がレディと同じじゃあないことが多くて当然、だって見え方が違うから。

 う~ん、う~ん、う~んと。

 時には相手の立ち位置に立って物事を考えろ、それを想像しろってことかな? 難しいよシス。

 考え悩む僕を見て微笑むシス。


 そう、見えないはずのシスが微笑む顔が僕には確かに見えた、変なシス。

 シスが言ってたことが、“思いやり”だって僕が理解したのは随分後のことだった。
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