第14話 メイド長の独白

文字数 1,635文字

 私はアレクサンドラ・アルバビロニア。

 メイドです。

 現在はエルブリタニア帝国第3皇子、ビクトリアス・エルブリタニア殿下に仕えている。

 ここ離宮では、『アレサ』の愛称で呼ばれている。

 本当は私の可愛いアリスと一緒に過ごしたいけど、彼女の頼みを断る事は私には出来ない。

 まあ、私には

は余り関係ないので、少しの間の我慢だな。

 ビクトリアス殿下は、アリスが心配して私を付けるだけの

だから致し方ない。

 あの紅玉の瞳で見つめられた者は、分け隔てなく強力な魅了と絶大な支配を受ける。

 心弱き胆力が低い者は、精神が犯されて殿下なしではいられない状態になり、精神を病む者も出てくる。

 初代エルブリタニア皇帝と同じ紅眼を持つだけでも異質なのに、殿下には得体の知れない

が確実に存在する。

 殿下自身、周りに避けられている状況に心を痛めているけど、可哀想だと思う反面、自分の力で他者が傷つく真実を殿下が知った時の方が心配だ。

 まあ、周りが注意していれば、対応できる者で固めているのだから大丈夫だろう。

 問題は殿下の

の制御の仕方を、誰も教えられないことと、殿下自身で

を制御しなければ、周りも含め殿下自身を滅ぼしてしまうことだろう。

 名高い剣術の各流派の創始者級の達人の胆力を以てしても、殿下の

の前に膝を屈したのだから。

 心が乱され平常時の判断力・思考力が著しく下がっていたしな。

 まあ中には

もいたがな。

 全く、円剣ともあろう者が、子供に遅れを取るとは世も末だ。

 お。

 今度は双剣か......ふむ。

 隠剣も大変だな。

 禿げないといいな。

 うふふふふふ。

「ごほん! 初めて御意を得ます殿下!」

 双剣も必死だな。

 己の存在理由を否定されようとしているからな。

 まあ、規定路線だ。足掻け。

 うふふふふふ。

 おいおい、双剣。

 私にも土下座はいいが......殿下はもういないぞ。

 あ、メアリーが見てるぞ。

 あああああ。

 チーン。

 流石、双剣だな。

 働きたくない、その一点を突き抜けてるな。

 ある意味尊敬するぞ。

 うん? 殿下が離宮を抜け出すぞ。

 おいおい、衛兵共。働けよ。

 たく、まあ殿下だからな。

 衛兵レベルでは無理からぬことよ。

 お、隠剣も過保護なことで大変だ。

 あれでは禿げるぞ......って、

 もう禿げてたな。

 では問題ないか。

 うふふふふふ。

 うん、良い出来ごと(イベント)だ。カキカキ。


「ビクター、僕。強くなると決めたんだ。みのがしてください」

 ふむ。

 泣き崩れる、隠剣か。

 大変だな、うん? 

 何か勘違いしてないか? 

 ふふふふふ、って笑ってるぞ。

 ああ。行ってしまった。

 おい。殿下を縄で縛ったままだぞ。

 さて、どうしようか。

 隠剣が気になるが......。

 殿下が縄を解けって叫んでるな。

 ...あ、漏らした。

 殿下、ぐすぐす泣いてるな。

 うふふふふふ。

 放置でいいな。

 うん、良い出来ごと(イベント)だ。カキカキ。

 ...ふむ、仕方ない。

 円剣に丸投げしよう。

 そうしよう。

 私は、

だけが持つ古代遺物(アーティファクト)の念話具で、円剣に状況を伝え、いつも通り殿下の観測日記を書き記した。

 ああ、アリス。

 喜んでくれるかな? 

 良い出来ごと(イベント)が目白押しだ。カキカキ。

 うふふふふふ。


 私の可愛い可愛いアリス。

 あなたさえいれば私は他には何もいらない。

 ああ、私の可愛い可愛いアリス。

 あなたが望むならアルグリア大陸全ての国を滅ぼしてあげる。

 うふふふふふ。
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