第156話 危機一髪!

文字数 1,147文字

 私は、バルクル・ラグーン。

 ラグーン王国の国王だ。



 キルベルが軍部を動かした。

 王都の南に位置するクナーン城砦から、テスラ王国へ侵攻する軍3000を発した。

 正気なのか、ドラゴニュートの王国へたった3000の兵で、如何するつもりなのだろうか?

 いや、勝つつもりなど、最初からないのだ。

 テスラ王国へ侵攻した事実の為だ。

 ベリウル王国の陰謀に、まんまと引っ掛かったキルベルと我が国の軍部。

 度し難い愚か者達だ。

 だが、我が国の軍が、テスラ王国へ侵攻したならば、其れは即ち私の判断だと周辺諸国は思うだろう。

 其れが狙いだと解っていても、私は貧乏くじを引いたものだ。

 父上、お恨み申しますぞ!







 「ふぅ~、どうにか間に合ったようだ」

 私の眼下には、テスラ王国へ続く渓谷を進む、軍3000名が進軍していた。

 やはりキルベルか?

 軍列の中程に、馬に乗り意気軒昂なキルベルの姿が、私の瞳に映っていた。



 グラっ、グラグラグラグラ、・・・・・・

 渓谷を突如襲う地震! 火山地帯であるクナーン山脈の地鳴りが、侵攻軍を襲う!

 侵攻軍の行く道を、大岩と土砂が降り積もる。

 此れで、クナーン渓谷の道は、当分の間閉ざされた。

 テスラ王国の国境を越えなければ、言い訳は何とでもなる。

 兵に死傷者がなければいいが。

 こんな実りのない侵攻では、愚か者を頂く兵達が可哀想だ。

 おっ! 王都からの急使が、侵攻軍に追いついたか。

 此れで軍を引いてくれればいいのだが。

 そう思いながら、私は渓谷を後にしたのだった。



 ほう、演習だと? そんな言い訳が通用すると本気で思っているのか?

「兄上、信じてくれ! 俺の言葉に嘘はない!」

「兄上ではない、陛下とお呼びしろキルベル!」

 キルベルを叱りつける、兄エリルク。

 兄上のお気持ちが全く解らん。

 一度腹を割って話をしなければ。


 結局、全責任をキルベルに取らせた。

 当然だ、証拠は挙がっていた。

 情報組織【鎮魂歌(レクエン)】の記号(シンボロ)の一人が、全てを揃えていた。

 言い逃れは出来ない。

 相手の書状を燃やしもせずに、大事に保管していた。

 オマケに自分の書状の写しまでもあった。

 用心深いのか、用心が足りないのか、頭が痛い。

 軍部の将軍達の首は全て挿げ替えた。

 国王の命に背く者だど、ラグーン王国にはいらん。



 さて、エリルク兄上と会談だ。

 腹を割って話すとするか、兄上全て知ったら、おったまげるぞ!







 私はバルクル・ラグーン。

 ラグーン王国の国王で、ラグーンの守護者だ。
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