第144話 家族

文字数 1,368文字

 我はアルバルバ・イルガリア。

 旅するシルフィだ。



 祖国は変革を迎え、新たな国として羽ばたこうとしている。

 我は其れを、外からじっくり見させて貰うつもりだ。

 我が護ろうとしたものが、どれ程の価値があったのか。

 シルフィ族の未来を我は見届けるつもりだった。

 

「ち、父上!」

「へ、陛下!」

 我の前には、愚息と親友がいた。

 驚くことに慣れた筈の我を、衝撃の事実が襲う!

 なんと、ビズ様は、我が愚息と親友を助けてくれていたのか!

 愚息と親友の話を聞き、自然と泪が落ちる。

 其れは二人も同じようで、三人で抱き合い涙したのだった。







「こんにちは、初めまして、僕ビクトリアスと言います。あなたを待っていました。良かったら僕達と一緒に旅をしませんか、アルバルバさん?」

「な、何故、我の名を知っている? 其れに、あなた方は一体何者なのですか?」

 驚きながらも素性を尋ねた我に、驚愕の事実が告げられる。

 へっ? エルブリタニア帝国、第3皇子?

 あ、あの? 西方諸国連合軍25000名を敗走させた?

 へっ? 十の災厄(アンタッチャブル)

 ええええ~!?

 我は疲れた。

 此の非常識の塊に。殿下に。ビズ様に。

 我を哀れむように見つめ、優しい言葉を掛けてくれたのは、レディ先輩。

「在るがままを受け入れ、楽に為れ! なあに、直ぐ慣れるさ!」

 確かに、驚きの連続だった。

 クローマ王国の復興の影で、西方諸国連合軍の敗走は絵物語のように、アルグリア全土にまことしやかに伝えられた。

 我も眉唾ものだと、高を括っていた。

 此の盗賊共の成れの果てを見るまでは。

 ゴクリ、……

 氷狼エンプレス。

 孤高の神獣。

 遠くハルベルト山脈を守護する災厄が、何故此処に居るのだ?

 へっ? 黒獣エクリプス、麒麟パラグラム、海竜リヴァイアサン、千手蜘蛛アンチノミー、不死鳥ラフレシア、超獣アプリオリ、……

 はっ! 往けない往けない、意識が無くなってしまった!

 本当なのか? いや、本当なのですか?

 我の前で、神獣化していく面々、……

 な、なんじゃこりゃ~!!!

 我は心の中で、絶叫を繰り返し、魂の昇天を何度か経験してから、意識を覚醒させた。

 其れに他の従う者も、何かが違う。

 我には解る。

 何故か解る。永年の王としての目が、此の集団は只者ではない、化物の集団だと理解する。

 へっ? 我を待っていた?

 何故、我が此処を通ると知っていたのか?

 ビズ様は、笑って答えてはくれない。

 レディ先輩曰く、ビズ様に質問しても答えてくれないのは、もう既に慣習と為っていると。

 不思議な方だ。

 良し、折角得た自由だ。

 此の化物達と旅をするのも面白い。

 こうして、我はビズ様と行動を共にすることとなった。







「何故、愚息とゼークドの件を教えて頂けなかったのですか?」

 ビズ様に質問すると、何故かはにかみながら、もじもじとしながら答えた。

「へへへへ! 忘れてたんだ、ご免ね! アルバ!」



 我はアルバルバ・イルガリア。

 残念な天然さんと呼ばれる少年と旅をするシルフィだ。
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