第81話 ローゼ(3)

文字数 1,378文字

 私はローゼティアス・エルブリタニア。

 エルブリタニア帝国第1皇女です。

 現在、ビズ兄様の離宮に遊びに来ています。

 何でも、ビズ兄様のお仲間を見たメイド達が卒倒してしまったとかで、離宮は大騒ぎになっていました。

 確かに、あの方々の気を真面に感じられる者達なら、卒倒しても致し方ないでしょう。

 あの方々の気を感じられるだけの力量が、メイド達にあったと言うことなのですから、ある意味喜ばしいことなのかな?

 サリーも顔色は余り良くはありませんが、何とか対応出来るようなので良かったです。

 私は、クロース公爵領から帝都までの間で大分、皆様方とは打ち解けました。

 特に黒猫ちゃんと思っていたエクスが、あの十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《黒獣》エクリプスだったと聞いた時は私も卒倒しかけました。

『おい、妹! ビズの妹は俺の妹だ! 俺が護ってやるからな!』

 私と出会った時よりも小さくなって私の頭の上で、グテッとしているエクスは兄様扱いしないと直ぐ拗ねる可愛らしいところがあります。

 そして、エクスから貰った黒獣の首飾りを私は肌身離さずにしています。

 エクス曰く、これで私の安全はエクスが保証するとのことでした。

 私に四人目の兄様が出来たことは嬉しいのですが、エクスの正体を知っている者達はエクスを見ると石のように固まったままの者達が殆どです。

 こんなに可愛い兄様(エクス)なのに、やっぱり十の災厄(アンタッチャブル)の名は伊達ではありません。

 そんなビズ兄様の離宮では、毎日十の災厄(アンタッチャブル)含め、帝国護剣のエドバルト・ナインテール卿とジャンクス・デルパオロ卿、そして、...デバック流創始者シヴァリウス・デバック様も来られて兄様達と一緒に己の武を高め合っていました。

 斯く言う私もビズ兄様から手解きを受けています。

 ビズ兄様曰く、ローゼは筋が良いと褒めて頂いております。

 そんな毎日を送っていたビズ兄様に、母様から帝城に来るようにとの知らせがありました。

 私を襲ったギエロア大王国の刺客達の首謀者の詮議が終わったのでしょう。

 通常は、ビズ兄様はそのような国事に関与する立場ではないのですが、今回の功労者でもあり呼ばれたようです。

 しかし、今回の件は公にはまだされていません。

 公にすればギエロア大王国との戦争は不可避ですし、現在エルバビロニア帝国はリグレス王国と戦争中なので、ギエロア大王国とことを構えるにしても準備が必要なのでしょう。

 母様は今回の件でギエロア大王国に対して激怒しており、直ぐさま母様直轄の騎士団《クリムゾンソード》だけでの侵攻を計画していたそうです。

 しかし、元老院の反対もあり、現在協議中だと母様自ら私に教えてくれました。

 母様、そんな大事を私に軽々と教えないで下さい。

 そして、帝城から戻って来たビズ兄様からこう告げられました。

「ローゼ。僕、ちょっと旅に出てくるよ!」

 え、ビズ兄様! 何処に行くの? 

 え、レクリア王国? 西方にある王国へ何故?

 え、密命? ビズ兄様そんな大事を私に軽々と教えないで下さい。

 私に叱られて、申し訳なさそうにするビズ兄様。

 そんなビズ兄様が私は大好きです。
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