第167話 元奴隷少女の追憶

文字数 1,140文字

 私はララミィ・ベル。

 元奴隷の侍女です。



 二年ほど前に、村に飢饉が起こり、食べるのに困った両親は私を奴隷商に売りました。

 まあ、私が望んだことなんですけどね。

 私には弟妹(ていまい)が居て、お姉ちゃんの私が何とかしなければと言う思いからでした。

 そんな私が運命の悪戯なのか、今ではエルブリタニア帝国第3皇子のビクトリアス殿下の侍女をしているのです。

 間違っても剣術などには無縁の生活を送っていた私が、今では剣術のない生活など考えられないように為ってしまいました。

 此れも全て、ビズ様の所為。おっとお陰ですね・・・・・・

 仲間の皆様も、化物なので、日常が可笑しなことに為っていても、誰も可笑しいと思わないと言う怖ろしい状態なのです。

 レディ先輩に相談すると、一言こう言われました。

「諦めろ、殿下の侍女なら慣れるしか無い」

 そう私に言ったレディ先輩は、自分自身に言い聞かせているようでした。

 うっすら目に涙が溜まっているように見えましたが、多分気の所為でしょう。

 十の災厄(アンタッチャブル)の皆様もよくしてくれますし、他の皆様も非常にお優しいです。

 只、ビズ様の頭の上でグテッとしているエクス様以外はですが。

 何故かエクス様は、私を毛嫌いしているような気がしてなりません。

 一度、エクス様に尋ねたのですが、要領を得ないのです。

「はははは、ララァ! 気にすることは無いよ、エクスは嫉妬しているだけだ!」

 えっ、嫉妬?

 高らかに笑いながら、エクス様を指さしながらアプリ様。

 【黒獣】エクリプス様と、【超獣】アプリオリ様は、犬猿の仲と言うほどではありませんが、仲が余り宜しくないようです。

 まあ、ビズ様を永遠の好敵手(ライバル)として、何かと構われるアプリ様が、ビズ様大好きエクス様には、我慢出来ないのかも?

 あ? そっか、私もそうなんだ。ビズ様が私にばかり構っているからだ。

 何て、理不尽な! 全部ビズ様の所為ではないですか!

 ビズ様にそう抗議すると、ビズ様は困った顔で「ごめんね、ララァ」と言うのです。

 ううう、理不尽なのは私なのに、何故ビズ様は侍女の私に謝るのでしょうか?

 全く理解出来ません。

 いえ、其れは嘘。ビス様がお優しい方で、私が甘えているだけ。

 そんな優しいご主人様に出会えて、私は幸せです。

「何度言ったら解るのですか、ビズ様?」

 今日も、ご主人様を確りした皇子様にする為、私は心を鬼にして注意します。

 本当は嫌われたくないけど、嫌われても私を救って頂いた恩を返さなければ。







 私はララミィ・ベル。

 元奴隷の侍女です。
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