第80話 黄金竜(2)

文字数 1,128文字

 俺はエクスナギア。

 十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《黄金竜》と呼ばれている。

 俺には1人息子がいる。

 その息子とは離ればなれで暮らしている。

 そんな生活に嫌気をさしていたある日、その息子が世界樹に近づこうとしていることに気付いた。

 焦った我は何と縄張り(テリトリー)の呪縛を自力で引き千切り、自由に息子に会いに行けるようになった。

 しかし、久しぶりに会った息子は何と反抗期なのか自分で強くなると言って俺を拒絶した。

 ガーン! 俺の可愛い息子が...俺に反抗するなんて!

 その事実に衝撃を受けた俺は絶望に包まれた。

 そんな俺を不憫に思ったのか、息子は必ず旅の途中で俺に会いに来ると約束をしてくれた。

 そして、俺に会いに来た息子は、十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《禍蛇》の息子になっていた。

 あれ程、世界樹に近付くなと言っておいたのに息子は全く言うことを聞いてくれない。

 これが子離れ、親離れなのかと俺は感慨深く昔を思い出した。

 あの虚弱な赤ん坊がこんなに元気に成長するとは...ふむ、俺は息子の成長を見守ろう。

 く、深淵の森だと! 《黒獣》エクスと旅立った息子...。

 く、ハルベルト山脈だと! 《氷狼》エンスと旅立った息子...。

 く、不死山だと! 《麒麟》パラムと旅立った息子...。

 く、マリエンテ湖だと! 《海竜》リヴァンと旅立った息子...。

 く、華厦山だと! 《白猿》ゴイスと旅立たなかった息子...。

 く、ヘクサ神林だと! 《千手蜘蛛》アンと旅立った息子...。

 く、アゾット炎獄だと! 《不死鳥》ラフと旅立った息子...。

 く、ヘルメゲン平原だと! 《超獣》アプリと旅立った息子...。

 む、妹を助ける為に旅に出ていたのか! く、言ってくれれば手助け出来たのに!

 俺は思念を込めて瞑目しながら、我が分身でもある黄金竜の首飾り越しに息子の様子を見ている。

 息子には肌身離さず、身に付けておくように言っている。

 これで、万が一息子に危険が迫った時は俺が助けに行ける。

 く、楽しそうに遊びやがって! 古き盟約の獣達との旅を眺めていると俺は無性に腹が立ってきた! 何故、俺はここにいるのか?

 他の盟約の獣達、今の呼び名は十の災厄(アンタッチャブル)達が息子と楽しそうに過ごす様子に嫉妬していた。

 しかし、俺は母親だ。

 息子を見守り、息子の成長の為に

手助けしてはならん...我慢、我慢だ。


 俺はエクスナギア。

 十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《黄金竜》であり、ビズの母親(守護者)だ。
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