第140話 化物皇子はご立腹です!

文字数 2,095文字

 私はララミィ・ベル。

 

奴隷です。

 現在は、エルブリタニア帝国第3皇子、ビクトリアス・エルブリタニア殿下にお仕えしています。



「ララァ、良い? 此の剣の扱い方はね、……」

 どうしてこう為ってしまったのでしょうか?

 私は現在、絶賛、剣の指導を受けています。

 其れも化物皇子と言われるビクトリアス殿下、御自らの手で指導を受けているのです。

 はっきり言います! 解せません!

 私は殿下のお付きの侍女では、ないのですか?

 どうして、殿下自らが私を指導されるのですか?

 全く以て理解出来ません!



「どうしたの、ララァ? 解らない事は聞かないと駄目だよ?」

 ああ、此の天然皇子が、私の思いやりを無慈悲に粉砕します。

 ええ、貴方が良いと言うのなら、言いましょう!



「殿下、私は何故剣の指導を受けているのですか? 私は侍女として働くのではないのですか?」

「そうだよ、侍女として僕に仕えて貰って、少し僕のお願いを聞いて貰うくらいだよ!」

 ほっとしました。やはり侍女で合っていたのですね。

 殿下との出会いを始め、何処か、何か、擦れを感じていた私は安堵しました。

 只、其のお願いとは一体何なのでしょうか?

 凄く、激しく気になります!

 聞いておかないと大変な事に為ると、私の経験から来る勘が、ビンビンに感じています!



「殿下、侍女の仕事に剣の修練は必要なのでしょうか?」

「勿論、必須だよ? ララァは知らなくても仕方ないけど、エルブリタニア帝国の侍女は、皆剣技を身につけているよ!」

 へ~、そうなんだ。

 でも何故、レディ先輩を始め皆さんは私から目を逸らしたのでしょうか?

 凄く、激しく嫌な予感がしますが、未だ聞かないと往けない事があります。



「殿下、ちなみに少しのお願いとは、具体的に何なのでしょうか?」

「ああ、僕と一緒に旅をしてくれれば良いんだよ!」

 なるほど、旅をすれば良いと。

 本当にそうなのか? 私は殿下を全く信用していないので、訝しみまくりです!



「道を開けろ、我らミルナ王国軍の進路の邪魔だ、退けろ!」

 私達はサルナ王国を横断している途中でした。

 其処にサルナ王国の隣国であるミルナ王国の軍勢から、街道からの退去を告げられました。

 理不尽ですが、致し方ありません。長いものには、権威には捲かれるのが、賢い生き方なのですから。

 勿論、退去命令に従うと思っていた私は、退去すべく道を開けました。

 でも、化物皇子一行は全く退去する素振りも見せません。

 尚且つ、ミルナ王国の斥候? の人達を煽っています! どう言うことなのでしょうか?



「おいおい、此処はサルナ王国の領土だぞ? 俺達が何故、ミルナ王国の命令に従わないと往けないんだ?」

 ゴクリ、......

 脳筋として化物皇子の仲間の中でも、一二を争うレイさまが、ミルナ兵に難癖を付け始めました!

 退去すれば良いじゃないですか? 其れで穏便に丸くことが収まるのですよ?



「レイの言う通りだ! 其の傲慢な言動、気に入らんな!」

 ああ、ジャイアントの騎士であるダロスさまが、此れも脳筋の運命なのでしょうか?

 レディ先輩を見ると、遠くを見る目で、現実逃避されているのが、丸解りです。

 そして、此の騒動を止めるべき殿下はと言うと。



「えーと、申し訳ありませんが、私達も先を急いでいるので、あなた達の方が退いてくれると嬉しいのですが?」

 ニッコリ微笑みながら、ミルナ兵に言うと、ミルナ兵は顔を真っ赤にさせて腰の剣を抜いて、こう言ったのです。



「我らミルナ軍の進路を邪魔する不届き者め! 切り捨ててくれる!」



 はい、終了です!

 えっ? 何の終了かって? 勿論、ミルナ軍の終了ですよ!

 こっちには十の災厄(アンタッチャブル)も、其れを軽くぶっ飛ばす化物皇子も居るんですよ?

 私はご愁傷さまと、心の中で呟きました。

 案の定、レイさまとダロスさまの二人だけで、ミルナ軍は壊滅しました。

 但し、問題は此処からでした。

 化物皇子が私に言うのです。

 ララァ、一人で此の軍勢を倒せるようになってねと。

 私は思わず言って仕舞いました。



「此の残念な、天然の、馬鹿珍が!」

 私の方言丸出しの言葉に唖然とした殿下は、其の言葉の意味を理解すると憤慨し、頬を膨らませて僕は怒って居るぞと私に言外に告げます。

 私はそんな殿下を無視して、殿下に告げます!

「殿下、あなたは自分が天然だと理解して下さい! 其の何気ない言葉が、悪意の無い言葉が、大事を起こすのですよ!」

 ぐぬぬぬっと言う呻き声が聞こえたようですが、多分錯覚でしょう。

 私は、耳は良いのです。

 勿論、エクスさまとアンさまには、事前に根回しを行っているので、不満の声は聞こえません。



 私はララミィ・ベル。

 ビクトリアス殿下の忠実な侍女です。
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