第79話 巣窟

文字数 1,571文字

 私は、シェルリア・マダガルス。

 メイドをしています。

 現在はエルブリタニア帝国第3皇子殿下のメイドをしています。

 第3皇子の離宮のメイドが結婚されたとかで欠番がでたと言うことでした。

 しかし、第3皇子ビクトリアス・エルブリタニア殿下のメイドは、正直帝城勤めのメイドの就職先としては人気はありませんでした。

 上のお二人のメイドなら為り手は引く手数多だったでしょうが、根暗で引き籠もりと言われている第3皇子殿下にお仕えしても正直旨味がありません。

 メイドとして一生を終える覚悟のメイドは、どれ程おられるのでしょうか?

 帝城勤めのメイドの多くは、貴族の三女以降の身分の者が殆どで、あわよくば貴族の正室、若しくは側室を夢見て働いている者が大多数です。

 斯く言う私もマダガス子爵家の三女です。

 下級貴族の三女と言えど、貴族の教育を受けている私にも玉の輿の夢はあります。

 では、どうして私が人気のない第3皇子殿下のメイドとして応募したかと言うと、実は啓示があったのです。

 私に啓示を下さったのは、法と秩序を司る天空神ライブラ様でした。

 啓示内容は、“エルブリタニア帝国第3皇子ビクトリアス・エルブリタニア殿下の様子を毎日報告せよ”とのことでした。


 天空神ライブラ様は、創造神カリダド様が創りし12柱の1柱。

 英雄と法と秩序を司る神様です。

 そのライブラ様から注目される第3皇子殿下とは一体どのような方なのでしょうか?

 先輩のメイドの方々からは、余り良い評価は受けてはいないように感じました。

 執事長のビクター様は、盲目的に殿下を溺愛しているようで、殿下の話をすると興奮の余り(ズラ)()れるので私はその都度直しています。

 その執事長から、殿下がもうすぐお戻りになると言われ私は期待に胸を躍らせました。


 毎日の就寝時のライブラ様へのお祈りの時に、私は殿下の報告をしていました。

 ライブラ様は、殿下の話を興味深くお聞きになられていました。

 そして、私に呉々も注意して、殿下の様子を知らせるように再度念を押されました。

 はて、何故ライブラ様は緊張した面持ちだったのでしょうか?


 な、なんですか一体この方々は? 殿下と一緒に離宮に見えられた殿下のお仲間方は一体どうのような方々なのでしょうか?

 私も帝城のメイドですので、武術の嗜みはあります。

 否、戦えないメイドが帝城メイドに任じられる訳もありません。

 しかし、この方々が纏っている

は異様でした。

 先輩のメイドの方々は、その姿を見ただけで卒倒してしまいました。

 そんな方々を仲間としている紅玉の瞳を持つビクトリアス殿下とは、一体何者なのでしょうか?

 紅玉を持つ皇族の方は、確か初代皇帝ロスタロス・エルブリタニア陛下しかいなかったはず。

 ゴクリ、やっぱり殿下は偉人になられるお方なのでしょうか?

 そして、先輩方が全滅してしまったので、私が殿下の専任メイドとなり件の方々の対応を任されました。

 え、私で良いんですか執事長? そう問いかけた私に満足そうに執事長はこう答えました。

「シェル、君しかいないんだよ! この化け物の巣窟を任せられる逸材はね」

 執事長は何故か遠い目をしながら、私の肩に手を置いてしみじみとされていました。

 そうですか、解りました。

 私にお任せ下さい。

 ところで、あのメイド長アレサ様は一体何の仕事をしているのですか?

 え、秘密? そ、そうですか。

 なるほど、この離宮には色々とあるのですね。

 良いでしょう!

 私は、シェルリア・マダガルス。

 第3皇子の専任メイドであり、天空神ライブラ様の使徒です。
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