第149話 帰還せず!

文字数 1,426文字

 私はシェルリア・マダガルス。

 エルブリタニア帝国第3皇子の専任メイドであり、天空神ライブラ様の使徒です。

 執事長のビクター様のお話だと、間もなくビクトリアス殿下がご帰還されるそうです!

 漸く天空神様の使徒としての、お仕事が出来ます!



「シェル、殿下はまだお帰りにはならないようだ、……」

 ビクター様が、苦渋の表情を為さっています!!!

 あのビクター様が! あの鬼畜のような方が! 傲慢の塊のような方が!

 其れだけ殿下を心配されてていこくいるのでしょう。

 殿下のお話をされる時のビクター様と、他の仕事の話をする時のビクター様とでは、明らかに別人だと思います!

 まるで、自分の息子のように愛おしく思っているビクター様が、時々不憫に感じるのは何故なのでしょうか?



「どうやら、ラグーン王国を見てから帰って来られるようだ、……」

 え? ラグーン王国? 余り聞かない国ですね?

「シェルは、知らないかもしれないが、アルグリア大陸の西南にある国だよ! テスラ王国の隣国だね!」

 あ、あれ? 確か殿下は、イルガリア王国に居られたんじゃ?

 凄く、大回りして帰ってこられるようです!

 此れは、今日の夜に天空神様に早速お伝えしなければ!



「其れから、ナリス王国の

騎士団長グリスティス・オールバ殿の家族の方々が、殿下よりも先に帝都にお着きに為る予定だ。シェルには、家族の方々の家の準備等お願いするから、其のつもりでいるように頼むね?」

「はい、承りましたビクター様!」

 むむむ、ナリス王国のグリスティス・オールバ様と言えば、確か青銅騎士団の団長をしている?

 あ、もうしていたになるのか。

 私でも知っている方を、配下に持たれるとは、凄い!

 でも、殿下はどうやって勧誘したんだろうか?

 まさかクローマ王国の再興を知っていた訳でもあるまいし、むむむ、解せぬ!?



「ああ、其れから、シェルは先輩に為る! 殿下が旅先で新しい侍女を雇い入れたそうだ! シェルには、私が直々に教えたからね? 今度はシェルが後輩を育成するんだよ? 頼んだよ!」

 な、何ですって? 私に後輩が出来るですって?

 其れは一大事ですよ! 殿下の館は、他の館とは全く仕来りと言うか、掟と言うか、決まりごとが違います!

 オマケに働いて居られるメイドの方の技術も、武術も、全て一級品!

 そんな方々を見て、新しく私の後輩に為る子が、果たして侍女を続けていけるのかが心配です!

 早速、根回しをして私の後輩を確保しなくては!!!

 そう、私には後輩は今まで一度も居ませんでした。

 其れは、帝城のメイド修行は過酷だからです!

 仕事もそうですが、処世術が無い者は生き残れません!

 女の花園なのです! 其れも大きな棘と毒が目一杯の!

 こうしては居られません、急がなくては!

 あ、あれ? 何か大事なことを忘れているような気がするけど?

 ま、忘れるほどのことなら、別に大したことではないでしょう!

 さあ、一刻も早く、後輩が来ても虐められない場所を作り上げなくては!

 うっふふふ! 私に後輩が出来る! 先輩って呼ばれちゃうかも?

 うっふふふふ!







 私はシェルリア・マダガルス。

 エルブリタニア帝国第3皇子の専任メイドであり、天空神ライブラ様の使徒です。
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