第41話 マリエンテ内海

文字数 1,521文字

 私はリヴァイアサン。

 盟約の獣の1柱。

 私の盟約の使命は、“供物を供えしものの願いを叶える事”だ。

 但し、私が供物と認めたものだけだ。

 私の寝床である地底湖へ時々、ウンディーネ達が同族の女を供物として供える。

 阿呆なの、馬鹿なの、○△□なの! 以前に供物として私に捧げられた女を気紛れに助けた。

 その女の“生きたい”と言う願いを叶える為、女の“纏っていた服”を供物として受け取った。

 その事が切っ掛けだと思う、ウンディーネの女が供物として私の寝床に捧げられ出したのは...。

「僕はビクトリアス・エルブリタニア! 《海竜》リヴァイアサン! お前の願いを叶える者だ!」

 は? 私の願いを叶えるだと? ふん、どこの羽虫か知らんがお前は私の

に今! 確実に触れたぞ! その命、ないものと覚悟せよ!
 
 ドッパパ~ン! ザッポ~ン! 地底湖の湖面を突き破り私は、私に大言壮語を叫んだ愚か者を睥睨する。

『我こそが《海竜》リヴァイアサンなり! 我が願いを叶えると(のたま)う愚か者よ! その命、ないものと覚悟せよ!』

 私はその愚か者を見下ろし、私の

を愚か者に浴びせる。

 ふ、心弱き者なら私の威圧で即お亡くなりになるはず。

 うん? な、何だと。

 私の最大級の威圧に全く反応しないだと? 

「初めまして、こんばんは。僕ビクトリアスと言います。突然夜分にお邪魔してごめんなさい。これ大した物ですが、良かったら



 エルフの少年が私に

を差し出す。

 な、な、何だと! それは女性の服だった。

 それも私の好みに大当り(ジャストミート)の服だった。

 ゴクリ、私は心の中で葛藤する。

 欲望に負けるなと私に告げる白い衣を纏った私と、欲望に正直になれと私に告げる黒い衣を纏った私が鬩ぎ合う。

 そして、黒い衣が圧倒的勝利を収め私は

した。

「き、き、着れるわ!」

 驚く私の目の前に大きな氷の鏡が現れる。

「リヴァン、似合ってるわよ」

 古き盟約の獣の1柱、《氷狼》エンプレスが私を褒める。

 うふふふふふ。

「リヴァン、お前...

?」

 古き盟約の1柱、《黒獣》エクリプスが私に尋ねる。

 うふふふふふ。

「リヴァン、おいら良いと思うぞ!」

 古き盟約の1柱、《麒麟》パラグラムが私を肯定する。

 うふふふふふ。

 やっぱりあなた達だったのね。

 懐かしい気配だと思った。

 でもどうやって皆は自分の縄張りから出れたのかしら? それに何故? この女性物の服を私は

のかしら? 

 供物と捧げられる女達を、その“生きたい”と言う願いの代償に“女性物の服”を受け取る。

 そうしている内に、何時しか私はその“女性物の服”を着たいと思うようになった。

 でも

した私には小さすぎて着れない! 私は破れて小間切れになった布切れを握り締め何度も涙を流した。

 

しても不格好で意味がない。

 私は願った私に合う“女性物の服が着たい!”と。

 私の願いを知り、私の願いを叶えた者とは一体何者なの? 私はエルフの少年に尋ねた。

 すると少年は何故か恥ずかしそうにビシッとポーズを決めて私にこう言った。

「僕が“何者”だって? 僕はリヴァイアサン、お前の願いを叶える者だ!」

 その時、私は確信した。

 この少年が

な少年であると確信した。

 そして、氷の鏡に映る震える手で筋肉質で大柄な体を抱き締める自分を見た。
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