第173話 師匠は幸せを満喫中!

文字数 1,236文字

 私はエドバルト・ナインテール。

 無職だ。法衣貴族ではあるが無職だ。

 無職だが、結婚をした。

 最高だ。

 家のことは全て妻に任せっぱなし。

 私はゆるりとしている。

 妻の名は、メアリー。

 働き者で、既に我が家を統括す剛の者だ。

 メアリーの指揮の元、一糸乱れぬ動きで全てが進む。

 なんて最高の妻を得たんだ。

 もう感謝しかない。

 私がゴロゴロしていても、全く怒らない。

 親友のジャンクスが何故か代わりに怒ると言う摩訶不思議な現象が、我が家では度々起こる。

 まあ、ジャンクスは私が最高の妻を得て僻んでいるだけだろう。

 ジャンクスにそんな一面があったとは、私も知らなかった。

 只、師匠を連れて私の家に遊びに来るのだけは頂けない。

 師匠は底なしの胃袋を持っている。

 師匠が来た日が、我が家の食料が尽きる時なのだ。

 まあ、全てメアリーが万事恙なくしてくれる。

 私は何一つとして、心配することがない。

 最高だ。

 最高の妻を嫁に貰った。



「あなた、殿下がまだ旅から戻って来ていないようですよ?」

「ああ、其れは良い報せだ。殿下にはゆっくりと旅を楽しんで貰いたい。何せ楽しめるのは今のうちなのだからね」

 私の言葉にメアリーは意味深に頷きながらも、殿下が旅をしているであろう空を窓越しに見つめるのだった。

 何でも西方諸国連合を蹴散らしたとか。

 まあ、殿下ならばやりそうなことだ。

 何でもアッバース王国を蹴散らしたとか。

 まあ、殿下ならばやりそうなことだ。

 何でもイルガリア王国の転覆に一枚噛んだとか。

 まあ、殿下ならばやりそうなことだ。

 何でも、テスラ王国を蹴散らしたとか。

 まあ、殿下ならばやりそうなことだ。

 其れに殿下の仲間がヤバい。

 十の災厄(アンタッチャブル)が七体いる時点で、誰も何処の国も勝てない。

 天災に挑むようなものだ。

 其の天災を仲間にしている殿下。

 もう化物皇子と呼ばれても致し方ないだろう。

 本人は不本意だろうが、真性の天然皇子だ。

 特に大事には為らんだろう。

 私達が考えている以上に、色々と残念なお方なのだ。

 まあ、私は我が世の春を謳歌させて貰おう。



「あなた、どうやら出来たようなの、・・・・・・」

 うん? 何が出来たんだメアリー?

 えっ、子供?

 そ、其れは目出度いじゃないか!

 此れで我が家も安泰だ。

 えっ? 安静にしているから私に全て頼むって?

 ま、ま、待ってくれ! 其れと此れとは違うんじゃないか?

 えっ? 子供が出来るのだからよろしくって?

 ま、ま、待ってくれ! おい、おいメアリー、・・・・・・







 私はエドバルト・ナインテール。

 無職だ。

 無職だが、今度パパに為る。

 さて、一休みしょう。

 良い日当たりだ、ズズズッ・・・・・・
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