第1話 初めての友達

文字数 1,981文字

 僕が一人で、部屋で泣いていると誰かの声が聞こえた。

 周りを見回しても誰もいない? キョロキョロと探していると、

『この世界にはまだプレイヤーはいないのね』

 って声がはっきりと聞こえた。

「誰? 誰かいるの?」

『えっ? 私の声が聞こえるの?』

 これが僕とシスとの出会いだった。

 シスはなんでも知ってる物知りさんだった。

 僕が家では邪魔者扱いされて悩んで相談すると、いつも慰めてくれた。

 そして、いつも助言してくれる。

 僕が剣術下手で落ち込んで、

「僕には才能がないのかな?」

 と溜め息をついているとある助言をくれた。

『ステータス表示で確認すれば良いんじゃないの? 私の声が聞こえるってことは使えるはずよ!』

 シスの話しだとこの世界には、スキルと言うものがあって、それを覚えると剣術でも魔術でも上手に使えるらしい。

 シスに教えてもらった言葉を呟くと、目の前に透明な板が現れた。

ーーーーー
情報:▼
氏名:【ビクトリアス・エルブリタニア】
レベル:【1】
備考:▼
年齢:【12歳/1318年6月18日生】
人種種族:【エルフ】
身分:【エルブリタニア帝国第3皇子】
職業:未設定
称号:【黄金竜(オウゴンリュウ)愛息(アイソク)】【黄金竜の討伐者】【精神破壊者】【覇者の卵】【プレイヤー】
才能:【双剣Ⅴ】
説明:▼
【エルブリタニア帝国女皇帝アリトリアス・エルブリタニアの第3子。双剣術の天才。】
状態:▽
能力:▼
筋力:【15】
耐久力:【23】
知力:【18】
敏捷:【29】
器用:【21】
魅力:【48】
部隊編成:▽
ーーーーー

 これが、僕のステータス? 表示なのか。

 あ! 僕にも才能があった! 双剣術の天才!? 

 やったぁ~って喜んでいたら、シスに注意された。

 この世界で

を使えるのは、僕1人だけだから誰にも言っちゃいけないって、理由は変人扱いされて苛められるんだって、うん。

 絶対、誰にも言わないよ僕。

 そして双剣の才能をもっと伸ばすなら、今習っている剣術ではスキルの系統が違うから、剣術の先生に双剣を教えてもらった方が良いよって助言をもらった。

 あれから剣術の先生にお願いしたら、何故か剣術の先生と勝負することになった。

 僕なんか先生を怒らせることしたかなぁ。グスっ。

「殿下! その腐った性根を叩き直してあげますぞ!」

「えっ! ええぇぇぇ~」

 世の中は理不尽だ。

 双剣を教えて下さいってお願いしたら、剣術のイロハも知らない子供に馬鹿にされたと先生が怒り出し、いつの間にか勝負することになっていた。

 僕の剣術の先生なんだよね? 

 僕よりも強いから先生なんだよね? 

 先生より弱い僕に勝っても意味ないよね? 

 どうして双剣を教えてって言ったら怒るの? 

 僕の剣術の先生なんだよね? 意味が解らないよ。

「では殿下! 掛かってきなさい!」

 僕と剣術の先生との勝負が始まった。

 いったい何の勝負なんだよ! 

 教えてよ! シス? って心の中で唯一の友達に助けを求めた。

『その剣術の先生は片手剣(長剣)を教える先生だから、双剣は教えられないよ? だから自分が馬鹿にされたと怒ってるんじゃないの?』

 そうだったのか。

 どうやら僕のお願いに、そもそもの問題があったらしい。

 ならそう言ってくれれば良いのに? でも謝っても許してくれなさそうな雰囲気だし考えてる場合じゃないよね。

 ってシス? どうして僕の考えてることが解ったの?

『ビズ! 私はあなた(プレイヤー)相棒(システムメッセージ)なのよ! 当然でしょ? それより勝負に集中して! それから双剣スキルは片手剣(長剣)では効果ないわよ?』

 そう言うことはもうちょっと早く教えて欲しかったよ、シス? 

 相棒って僕たち友達じゃあないの? 

 でも何とか先生にお願いして、練習用の木剣をもう1つもらって構えたけど、あれ何か体がいつもと違って思うように動くぞ!

 双剣を構えたら先生から打ち込んできた。

 僕の右手の剣と左手の剣に、別々に意思があるかのように先生の攻撃を左手の木剣で往なして、右手の木剣を先生の肩に叩きつけた。

「はっ!」

「くっ! がはっ!」

 勝負は一瞬でついてしまったが、先生は、

「油断した! 次は本気でいくぞ!」

 って何回も向かってきた。

 勝負って何回もするものなんだね、知らなかったよ。

 最後は先生がボロボロの布切れのようになっていた。

 僕が剣術の先生に勝っただなんて信じられない。

 傷だらけの先生は負けたのに、何故か笑顔で僕の双剣の腕前を褒めてくれた。
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