第47話 角笛

文字数 1,573文字

 俺はレイ・ホウセン。

 元フューダー大王国の将軍だ。

 大王陛下を口喧嘩の末にぶっ飛ばした俺は、親父の威光と功績により、命を奪われずに国外追放処分になった。

 俺は、俺が納得出来ないことは、例え大王陛下であろうと俺の信じる武を押し通す。

 それで命を落とすなら、俺の武はそこまでの武だってことだ。

 俺は力がものを言う国、獣王が治めるオルスカ王国に来ていた。

 俺に従ってフューダー大王国を出奔して来た馬鹿野郎共もいるから、ここで大きく稼ぐつもりだ。

 オルスカ王国には他国の者でも参加できる、闘技会が丁度この時期に開催される。

 優勝者は獣王と闘える機会を得る。

 俺は俺自身の力を試す、獣王との闘いが、俺のこれからの武への試金石になる。

 良し!一丁やってやるか!


 こんなものなのか? 俺はオルスカ王国闘技会のレベルの低さに驚いた。

 いや、俺の武が凄いのかもしれない。

 俺をここまで鍛えてくれた親父に感謝だな。


「小僧! ここまで良く勝ち残った! だが俺は最強の武を受け継ぐレイ・ホウセン! ......」

 こんなエルフの餓鬼が決勝の相手だと? フッ、冗談も大概にしろ! 俺は餓鬼だろうと一切の手加減をしない。

 何故なら、それが武を志す者への礼儀だからだ。

 いざ参らん! 小僧! 勝負だ!


「グッ、ガッハァ!」

 ば、ば、馬鹿な。

 俺はエルフの餓鬼を睨みつける。

 この餓鬼、強すぎる。

 く、くそ。俺の武は、こんな餓鬼に負けるレベルの武だったのか。

 む、無念だ。

 バタリ。


プップップッー! プップップップッープッー! ブゥオオオオオー!

 角笛が王宮の大広間で鳴り響く。

 俺は闘技会後に行われる獣王主催の宴に参加している。

 ここに来た理由は1つ。

 俺を倒し、獣王を倒したエルフの

に会う為だ。

 部下から少年もこの宴に参加していると聞いている。

 どこにいるんだ? 俺は少年を探す。

 でも見付からない。

 そうしているとこの国の王、獣王に声を掛けられた。


「初めて御意を得ます、獣王陛下......」

 俺も宮中作法は子供の頃から親父に叩き込まれている。

 獣王は俺の武を褒め、俺が少年を探していると知ると、

「ああ、あの化け物は、そこの中庭に化け物の仲間といるぞ。只、忠告しておく。俺以上に礼節を持って接しろ!」

 ほ、ほう。

 獣王にそこまで言わせる器なのか? 俺は意気揚々と中庭で賑やかに盛り上がっている一団に歩み寄る。

 え、歩み寄れない! 体がこれ以上動かない? 俺の本能が言っている。

 逃げろ、近付くなと。

 な、なんだ今まで感じたことのない威圧(プレッシャー)を感じる。

 え、部下達が俺の副官以外全員が白目を剥いて気絶している。


「レ、レイ様。......」

 副官のチョウ・ライゼンが呻くように俺に、これ以上近付くと危険だと告げ、気絶した。

「そ、そこのエルフの少年!」

 俺はこれ以上進めず、思わず一団に向かって声を掛ける。

 この俺が近付けない程の雰囲気を持つ一団とは一体? お、やっと俺に気付いてくれた。そして、エルフの少年は俺に近寄りこう言った。

「バジリスクの唐揚げとコカトリスの竜田揚げを3皿づつ大盛りでお願いします!」

 え、俺を覚えてもいない? う、嘘、嘘だよね? 俺は給仕に間違われた? 

 俺は今まで味わったことのない屈辱を感じる前に、エルフの少年の一言に衝撃を受け、屈託のない笑顔に魅了され、紅玉の瞳に吸い込まれた。


 このお方こそ、我の武を捧げるに相応しい! そう

思った瞬間、俺の意識は遠退き、

なった。チーン。
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