第62話 錬金術師

文字数 1,224文字

 儂はレジッド・カバデルア。

 この迷いの森に隠棲している錬金術師だ。

 世を捨て、この森を終の棲家として数百年。

 そんな儂の庵に久方ぶりの客が来た。

 見るからに異様な集団であった。

 頭に黒き子虎を、肩には紅き小鳥を乗せたエルフの少年。

 如履薄氷の如き雰囲気を身に纏うウルフビーストマンの美女。

 田舎者丸出しの挙動だが、身に纏う雰囲気が危険を告げるヒューマンの優男。

 見るからにヤバい、身に纏う雰囲気はメデューサの如きウンディーネのオカマ。

 人形の如き精密な容姿と、圧倒的威圧感を身に纏うアラクネの少女。

 筋骨隆々の鬼神の如き雰囲気を身に纏うライオンビーストマンの戦士。

 窶れた疲労困憊の態でいるが、目が異様な輝きを魅せるエルフの美青年。

 圧倒的暴力を身の纏うケンタウロスの武人。

 その集団が纏う異様な威圧感が、客が人為らざる者であると儂に告げる...化け物か。

 ストンと腑に落ちる。

 そのような者達ならば、この迷いの森で儂の庵に辿り着けるのも納得だ。

「こんにちは、初めまして僕ビクトリアスと言います。今日は突然お邪魔して、ごめんなさい。どうしても貴方に作って貰いたい物があって来ました」

 ほう、儂に作って欲しい物だと。

 つまり、儂が誰か知っておると言うことだ。

 な、エリクサーだと! 無理だ、儂はエリクサーの作り方さえ知らん。

 儂が求めた錬金術の秘奥の一端だ。

 儂が辿り着けなかった秘奥を求めて此処まで来たのか、申し訳ないが儂に無理だ。

 数百年の時をこの迷いの森で、錬金術の探求だけに捧げた儂でさえも無理なのだ。

 この世にエリクサーは確かに存在する。

 しかし、未だその作成方法は不明。

 故に錬金術の秘奥の一端に掲げられておる。

「申し訳ないが、儂はエリクサーの作り方さえ知らん唯の錬金術の探求者でしかない」

 え、作り方(レシピ)は少年が知っている?

 え、材料も全てある? マジか!?


 儂は半信半疑で少年の持参した材料で、少年の作り方(レシピ)通りにエリクサーを作った。

 儂には解る。

 これが儂が永年求め欲した錬金術の秘奥の一端であるエリクサーだと...儂には解るのだ。

「あ、貴方は一体何者なのですか?」

 儂が問うと、件の少年は何故か恥ずかしそうにビシッとポーズを決めて、

「僕が“何者”だって? 僕はレジッド・カバデルア! お前の願いを叶える者だ!」

 な、なんと言うことを...。

 儂の願いは唯1つ! 錬金術の

の秘奥だ! 

 この少年は錬金術の秘奥であるエリクサーの作り方(レシピ)を知る者。

 何故、其れを知っているのか? 否! 理由よりも重要なのは、この少年は儂の求める物を知っていると言う事実こそが至高なのだ!


 余りの感動に儂の心臓が快哉を叫び、3度程止まったのはご愛嬌だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み