第36話 友(2)

文字数 1,549文字

 俺はエクリプス。

 漆黒の獣だ。

 巷では十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《黒獣》と呼ばれている。

 まあ、俺等は自分達の事を“古の盟約の獣”って言ってる。

 でも今の俺等の縄張りへ侵入してくる奴等にそう言っても話が通じない。

 まあ、時代の流れって奴だ。

 でも時代が流れるのも悪い事ばかりじゃない。

 だって俺に友達が出来た。

 もう一度言う、友達が出来た。

 うっししししし。

 それに我が(ビズ)は凄い。

 何でも知ってる物知り屋さんだ。

 俺が悩んでる事を全て解決してくれた、凄い奴だ。

 (ビズ)曰く、俺の周りの漆黒の闇は

が出来る。

 これで俺のマイホームがこれ以上広がらない。

 おお、本当だ出来る。

 出来るぞおおおおお。

 (ビズ)曰く、縄張りから移動出来ない盟約には

がある。

 それは(ビズ)の仲間になれば解決出来る。

 これで(ビズ)と一緒に旅が出来るぞ。

 おお、本当だ出れる。

 出れるぞおおおおお。

 そして、最大の悩み“友達が出来ない”は(ビズ)が疾うに解決してくれている。

 うっししししし。

 俺は(ビズ)の頭の上に乗っている。

 (ビズ)曰く、俺を落とさずに魔物を狩り、動作の習熟度レベルを上げるそうだ。

 まあ、強くなるって事だな。


 へー、ここがエルフの国か。

 くんくんくん、良い匂いがするぞ(ビズ)よ。

 うん、旨い。

 こんな旨い物をエルフは食ってるのか、やるなエルフ。

 でもこ奴等、

意識してるな

で解る。

 まあ、(ビズ)

ようだから、まあいっか。


 俺等は今雪山を登ってる。

 もう一度言う、雪山を登ってる。

 それから不思議な事に(ビズ)の仲間になってから、暑いとか寒いとかそう言う事を殆ど感じない。

 何故だろう、まあいっか。

 そして、俺等の前に古き盟約の獣の1柱が姿を現した。

『我は《氷狼》エンプレス。何故、我の縄張りを侵すか?』

 へー、他の奴等はこんな風にやってるのか勉強になるな。

 俺の心の日記帳に書き込んでおこう。

 おいおい、おい。

 エンス、俺の(ビズ)が頼んでるんだぞ。

 お前が折れるのが筋だろう? え、別に花水晶の密を渡すのは良い? 

 なら何が問題なんだ? え、何故俺が縄張りを離れて行動出来るかって? 

 それはお前、うっししししし。

『これこそが俺の(ビズ)の力だ! ひれ伏せ、戦け、膝まずけ!』

 俺は大いに(ビズ)を自慢した。

 え、エンスも縄張りから出たいって? 

 それは俺の(ビズ)に聞け! すると(ビズ)はあっさり了解した。

 え、良いの? まあ、(ビズ)が良いなら俺は別に。

 どきどきする、こんなに部下じゃない仲間と大勢いるなんて。

 するとエンスが(ビズ)に問う。

 お前は何者だ? って、おいおい、おい。

 (ビズ)は俺の友達に決まってるだろ! 

 すると(ビズ)は、何故か恥ずかしそうにビシッとポーズを決めてこう言った。

「僕が“何者”だって? 僕はエンプレス、お前の願いを叶える者だ!」

 俺は思い出す、1人ぼっちだったあの頃を。

 俺は思い出す、俺に言った(ビズ)のあの言葉を。

 俺は思い出す、あの(ビズ)の言葉に誓った俺の想いを。


(ビズ)よ、俺は誓う! 俺は(ビズ)の願いを叶え、(ビズ)の敵を討ち滅ぼす! ずっとお前(ビズ)の友達だ!】

 
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