第68話 旅立ち

文字数 1,003文字

 儂はレジッド・カバデルア。

 迷いの森に隠棲していた只の老いぼれじゃ。

 現在、我が師ビクトリアス様と共にエルブリタニア帝国クロース公爵領ダマスクローズを目指し移動中だ。

 我が師は明確な目的を持って行動をしている。

 迷いの森を旅立ってから行動を見るに全てが、緻密な計算の上での行動だと儂には解る。

 目的地を聞き某かのことが起こるのは確実なので、儂も己の技を駆使して我が師の助けをせねばなあらぬ。

 我が師を筆頭として、古の盟約の獣達...ああ、今は十の災厄(アンタッチャブル)と呼ばれる7個体と、明らかに種族を超越した力を持つ二人がいる集団には流石の儂も驚き呆れ果てる。

 それとエリクサーを転ばぬ先の杖だと言うことは、我が師にとり大事な人が死の危険に晒される可能性があるのであろう。

 只、この集団に勝てる国家自体が存在するまい。

 果たして我が師の懸念とは一体何なのであろうか。

 あの迷わずの森を迷いもせずに進む我が師には、知り得ぬことなどないように思う。

 我が師は休憩の合間に子供に昔話を聞かせるが如く、儂に錬金術の秘奥を語る。

 儂は其れを記録し、時には手持ちの素材で試しながら我が師の異常性をひしひしと感じる。

「レジ、ホムンクルスの作成方法は...」

 我が師よ...サラッと秘奥中の秘奥を儂に語らないでくれ、我が心臓がもたんわい。

 十の災厄(アンタッチャブル)達は、己が放つ威圧の調整が出来るように瞑想している。

 レディさんはそんな十の災厄(アンタッチャブル)を注意深く観察している。

 レイさんは我が師と実践形式で闘っているが、我が師にその攻撃は擦りもしない。

 そう言う儂は我が師からお聞きした錬金術の秘奥の検証をしている。

 我が師曰く、日々の精進が己を高見に導いてくれる。

 つまり、千数百年の研鑽も無駄では無い。

 その時間が儂を我が師と出会わせてくれた。

 ああ、我が師の言葉に儂は何度救われたことだろう。

 え、賢者の石...くっ! 儂の心臓が興奮で張り裂けそうじゃ!

 我が師よ! 老い先短い儂に刺激は禁物なのじゃ!

 え、儂の体のこともあるのでこれからは、余り錬金術の話はしない方がいいかなですと?

 否、否、否ですじゃ。

 我が師よ! 我が身が滅びようとも錬金術の秘奥全てを修得したいのですじゃ!
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