第174話 ミラダモリス王国

文字数 1,309文字

 我はダンダリス・ミラダモリス。

 ミラダモリス王国の国王である。

 最近、我が領土内で重大事件が起こっている。

 テスラ王国国境と我が王都ミラダモリスとの中間地点に、サダリモリス伯爵の領地がある。

 其処で最近大勢の住民が苦しみだし、遂には死んでしまったのだ。

 原因究明の為に伯爵も死力を尽くしていたが、其の伯爵も陣頭指揮を執っている最中に苦しみだし亡くなった。

 此れは由々しき事態だ。

 疫病ならば根絶しないと他の領地まで拡がってしまう。

 だが、安易にサダリモリスの土地を封鎖し、領民を見捨てたと有っては我が国の沽券にも関わる。

 其処で癒やしの術を遣う者達を騎士団と同行させ、原因究明の部隊とした。

 しかしだ。

 何と其の部隊が行方不明に為っていた。

 (そもそ)も、還って来ない。

 誰一人として連絡も全く無い。

 此の部隊を率いる将軍ミクリエールスには、考えられない失態だった。

 我が国の至宝とまで言われたミクリエールスが、片手落ちな行動を為る筈がない。

 ミクリエールスに何か有ったとすると、誰にどうのように命じれば良いのか。

 ふむ、どうしたものか。



「陛下、サダリモリスで食料不足が起こっていますが、商人達も疫病を怖がって近寄りもしません。此の侭では、サダリモリスは死に絶えてしまいます。部隊で物資の輸送を進言いたします」

「キルダエルス、誰が其の任に相応しいと思うか?」

「はっ! 行方不明のミクリエールス卿の血縁者は血気に逸る怖れがあるので除外するとなると。ニルナルス卿が適任ではないでしょうか? 

はありますが、疫病など寄せ付けない方なので、・・・・・・」

 宰相キルダエルスが申したニルナルス卿とは、ベラモーリス・ニルナルス子爵の事だ。

 はっきり言って無能ではない。

 だが、怠け者なのだ。

 自分の領地も全て自分の弟に任せて、此処王都でボーッとしているような奴だ。

 だが、此のニルナルス卿はオルスカ王国の闘技会に於いて、エルブリタニア帝国の化物皇子と剣を交えた剛の者だ。

 信じられるか? 化物皇子は、あの獣王をボコボコにしたらしい。

 オルスカの闘技場【自然淘汰(ナチュラルセレクション)】。其処で栄冠を頂いた化物皇子の武勇伝はまだまだ続く。

 最近では狂国アッバースをも、ボコボコにしたらしい。

 一体エルブリタニア帝国は、如何言う心算なのだろうか?

 自国の皇子を遣って、他国に攻め込む口実でも探しているのか?

 全く以て摩訶不思議だ。

 おっと、話が逸れたな。

 ふむ、此れと言った妙案も出ない。

 致し方ないだろう。



「ベラモーリス・ニルナルス卿に命を降す。サダリモリスに物資を補給後、原因究明の任に付けと申しておけ!」

「はっ!」

 宰相が部屋を出て行く。

 はてさて、どのような事がサダリモリスで起きていると言うのだ。







 ダンダリス・ミラダモリス。

 ミラダモリス王国の国王。

 此の選択がミラダモリス王国の運命を決定するとは露と思わずに。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み