第134話 ミルナ王国

文字数 1,151文字

 我はレクトール・ミルナ。

 ミルナ王国の国王である。

 現在、我が国の西のシルフィ族の国で内乱が起こっている。

 この機会に攻め込んで、領土拡張を目指したい処ではあるが、一か八かの賭けで攻め込む訳にもいかない。

 我の判断一つで、国の運命が変わり、滅亡の憂き目に遭うのだから。

 

「申し上げます、陛下! 現在、サルナ王国が、タックロ王国へ進軍中との報せが入りました!」

 むむむ、サルナ王国が動いたか。

 果たして、その行動は吉か凶か。

 我が国は、迂闊には動けん。

 思いっきりが良過ぎだ、イスリナム・サルナ。

 まあ、良い。

 此れでサルナ王国が、漁夫の利を収めた処で、我がミルナの方針は変わらない。

 我が国は堅実に領土拡張をしていくのだ。

 隣国に攻め込まれるような隙を与えずに、隣国の動静を見逃さない。

 其れこそが、ミルナ王国の歴代の王達からの教えであった。



「申し上げます、陛下! サルナ王国がどうやら、タックロ王国の攻略に失敗した模様です!」

「何じゃと、仔細は解っているのか?」

「はっ! 何でも旅の武芸集団に、問答無用で襲い掛かり返り討ちに合ったとか! 其れも十数名の集団との報告が来ております!」

「なっ、確かサルナは全兵力に近い約3000の兵力で攻め込んだはず! 何かの間違いではないのか?」

「はっ! 現在、情報が錯綜しておりまして、只今再度確認しております!」

 ふむ、十数人で百倍以上の軍勢と交戦して、生き残るのも難しいではないか。

 う、うん? あ、あれ? 最近、同じような話を聞いた覚えがある!

 お、思い出した! エルブリタニア帝国の化物皇子の話だ!

 何でも、クローマ王国再興に協力した西方諸国連合軍25000名を敗走させたとか。

 其れも十数人で。

 最初は此の話を聞いた時、眉唾な話だと捨て置いたが、まさか真実かも知れん。

 う、うん? あ、あれ? 此れって最高の勝機じゃないのか!

 考えろ、考えろ、成功の確率は、……高い!



「誰か在る!」

「はっ! 御前に!」

「タックロとサルナを警戒中の国境防衛部隊へ急使を送れ! 砦に防衛最小限の部隊を置き、持てる戦力でサルナを落とせと、行け!」

「はっ! 畏まりました!」

 近習が部屋を出て行った。

 国境防衛に戦力を追加して2500。

 防衛には500もあれば充分。

 残り2000でサルナを落とす。

 敗走軍が簡単に再編出来る筈もない。

 詰めに後500ほど送っておけば、サルナは落ちる!

 じっくりと待った甲斐が合ったわ! ふっはははは!



  我はレクトール・ミルナ。

  ミルナ王国の国王で、沈着冷静な男だ。
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