第159話 竜の民

文字数 1,068文字

 我はゼノン・テスラ。

 テスラ王国の国王だ。



 我が国には、掟がある。

 其の掟とは、(プラーナ)を身体に纏えるか、纏えないかだ。

 我が国の民で、成人の儀を迎え、(プラーナ)を纏えない者は、国民では無くなる。

 国民で無い者は、一定期間しか滞在出来ない。

 滞在期間が過ぎれば、一度国外に出て、また入国をしなければならない。

 其れは、他国の外交官で在ってもだ。

 テスラ王国では、(プラーナ)が重要視される。

 遙か昔、(いにしえ)の竜が、ドラゴニュートを生み出し、(プラーナ)を伝えた。

 (プラーナ)を纏えるか、如何かで、戦闘能力が圧倒的に違う。

 攻撃力も、防御力も、圧倒的に上昇する。

 テスラ王国の国民は、幼き頃から、(プラーナ)を練り纏う習慣を身に付ける。

 其れは、朝の挨拶と同じく、習慣と為る感覚だった。

 我が国は、国民総戦士の国だ。

 戦えない弱者は、民とは認められない。


「陛下、ラグーン王国3000名が、クナーン山脈を進んで、我が国との国境に迫っているよし、如何致しましょうか?」 

「ふむ、(ロッソ)を向かわせろ!」

「はっ!」

 ラグーン王国か、確か新王に代替わりした筈。

 新たな王は、間抜けのようだ。

 たった3000人で、我が国にちょっかいを掛けに来るとは。

 間抜け以外に言う言葉はない。



「陛下、(ロッソ)から連絡が入りました。内容は、【敵は退却した! 地殻変動により、クナーンの道が閉ざされたからだ! 無駄足だった!】以上です!」

 そうか、天変地異なら致し方ない。

 (ロッソ)には、また違う獲物を宛がえば良い。

 奴は美食家ではなく、健啖家だ。



「陛下、ゼスト殿下の件ですが、・・・・・・やはり無理のようです」

「で、あるか! 致し方ない、ゼストは廃嫡するしかあるまい!」

 ふむ、(プラーナ)を纏えない王太子など、笑い話にもならん。

 外に出すしかあるまい。

 此の儘、テスラに居ても肩身の狭い想いをするだけだ。

 我は、我が長男であるゼスト・テスラの廃嫡を即決した。

 幼き頃より、ゼストだけ(プラーナ)を纏えなかった。

 こうなる事も想定はしていたが、我はテスラ王国の国王である。

 息子だけ、特別扱い出来る筈もない。

 許せよ、ゼスト。







 我はゼノン・テスラ。

 テスラ王国の王にして、竜の民ドラゴニュートの(おさ)である。
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