第2話 先生の憂鬱
文字数 1,358文字
俺はジャンクス・デルパオロ。
帝国剣術の正流《デバック流》の師範代だ。
有り難くもこの度、女皇帝陛下の第3皇子ビクトリアス殿下の剣術指南役に任命された。
殿下の剣術指南役が、数人自らの不明から職を辞したことは、師匠から聞いていたが、殿下は聡明で才気に溢れる人物とのことだったので、俺自身は大変楽しみにしていた。
「殿下、一にも二にも練習あるのみですぞ。剣術の基本は素振りです。さあ
「はい! 先生!」
殿下は素直で教え甲斐がある生徒だったが、何か胸の内で悩んでいるようで注意しながら日々指導をしていた。
確かに剣術が上達するのが普通の生徒よりも遅いのは事実ではあるが、真面目な性格で人一倍練習に打ち込む姿を目の当たりにしている俺は、殿下は大器晩成であろうと全く心配はしていなかった。
最初の出会いから2ヶ月が経つが、中々上達しない殿下に俺も焦りを覚えてきていた。
そんな中、殿下から双剣を教えて欲しいと言われ、俺は正流である長剣(片手剣)の剣術指南役なんだぞ、馬鹿にしているのかと一向に上達しない殿下が、長剣(片手剣)に飽きて亜流(双剣)を習いたいと言うことに腹を立てた。
今思うと恥ずかしくて穴があったら入りたいくらいだが、その時は殿下の性根を叩き直すんだと自分勝手に思い込んでいた。
「殿下! その腐った性根を叩き直してあげますぞ!」
「えっ! ええぇぇぇ~」
殿下はなにやら驚いて、なにやらぶつぶつ呟いてるが、
「では殿下! 掛かってきなさい!」
一向に動かない殿下が申し訳なさそうに、木剣をもう1本欲しいと言ってきたので、わざと
本気の一撃ではなかったが、俺の攻撃を一瞬で左手の木剣で交わした殿下は、右手の木剣で俺の肩に鮮やかに一撃を入れた。
「はっ!」
「くっ! がはっ!」
ば、馬鹿な。この俺に一撃を入れるだと。
ええい、次は本気でいくぞと殿下に何度も挑んでいったが、ぼこぼこにされて、この勝負は俺の惨敗で終わったのだった。
はっはっはははっ。
渇いた笑い声を出しながらも、俺はなんて馬鹿なんだろうと自嘲していた。
従来、双剣とは短剣の二刀流で、上級者でも一部の
殿下は、双剣の天才だったのだ。
双剣の才能があっても、長剣(片手剣)の才能があるとは限らないが、その双剣の天才に、長剣(片手剣)を一生懸命教えていたのかと、俺には見る目がなかったと落胆する反面、この若さで、俺を子供のように遇 う若き天才の出現に興奮した。
俺も所詮、ただの剣士だったと言うことだと自嘲した。
ぼろぼろの体で、最後くらいは威厳をもって殿下に接しようと、剣捌きを褒めながら、殿下以上の双剣の腕前をもつ剣士は、俺は
まぁなんとかなるだろうと、殿下に新しい剣術指南役を推挙することを伝えた。
殿下の剣術指南役を2ヶ月でクビになったと、師匠になんて言おうか、考えながら憂鬱な気分で、俺は
帝国剣術の正流《デバック流》の師範代だ。
有り難くもこの度、女皇帝陛下の第3皇子ビクトリアス殿下の剣術指南役に任命された。
殿下の剣術指南役が、数人自らの不明から職を辞したことは、師匠から聞いていたが、殿下は聡明で才気に溢れる人物とのことだったので、俺自身は大変楽しみにしていた。
「殿下、一にも二にも練習あるのみですぞ。剣術の基本は素振りです。さあ
10000
回から始めましょう!」「はい! 先生!」
殿下は素直で教え甲斐がある生徒だったが、何か胸の内で悩んでいるようで注意しながら日々指導をしていた。
確かに剣術が上達するのが普通の生徒よりも遅いのは事実ではあるが、真面目な性格で人一倍練習に打ち込む姿を目の当たりにしている俺は、殿下は大器晩成であろうと全く心配はしていなかった。
最初の出会いから2ヶ月が経つが、中々上達しない殿下に俺も焦りを覚えてきていた。
そんな中、殿下から双剣を教えて欲しいと言われ、俺は正流である長剣(片手剣)の剣術指南役なんだぞ、馬鹿にしているのかと一向に上達しない殿下が、長剣(片手剣)に飽きて亜流(双剣)を習いたいと言うことに腹を立てた。
今思うと恥ずかしくて穴があったら入りたいくらいだが、その時は殿下の性根を叩き直すんだと自分勝手に思い込んでいた。
「殿下! その腐った性根を叩き直してあげますぞ!」
「えっ! ええぇぇぇ~」
殿下はなにやら驚いて、なにやらぶつぶつ呟いてるが、
「では殿下! 掛かってきなさい!」
一向に動かない殿下が申し訳なさそうに、木剣をもう1本欲しいと言ってきたので、わざと
長剣用
の木剣をもう1本渡して俺の方から仕掛けたのだった。本気の一撃ではなかったが、俺の攻撃を一瞬で左手の木剣で交わした殿下は、右手の木剣で俺の肩に鮮やかに一撃を入れた。
「はっ!」
「くっ! がはっ!」
ば、馬鹿な。この俺に一撃を入れるだと。
ええい、次は本気でいくぞと殿下に何度も挑んでいったが、ぼこぼこにされて、この勝負は俺の惨敗で終わったのだった。
はっはっはははっ。
渇いた笑い声を出しながらも、俺はなんて馬鹿なんだろうと自嘲していた。
従来、双剣とは短剣の二刀流で、上級者でも一部の
超級者
と呼ばれる達人だけが、長剣の二刀流を使える。殿下は、双剣の天才だったのだ。
双剣の才能があっても、長剣(片手剣)の才能があるとは限らないが、その双剣の天才に、長剣(片手剣)を一生懸命教えていたのかと、俺には見る目がなかったと落胆する反面、この若さで、俺を子供のように
俺も所詮、ただの剣士だったと言うことだと自嘲した。
ぼろぼろの体で、最後くらいは威厳をもって殿下に接しようと、剣捌きを褒めながら、殿下以上の双剣の腕前をもつ剣士は、俺は
あれ
以外思い付かなかった。まぁなんとかなるだろうと、殿下に新しい剣術指南役を推挙することを伝えた。
殿下の剣術指南役を2ヶ月でクビになったと、師匠になんて言おうか、考えながら憂鬱な気分で、俺は
あれ
に会いに行ったのだった。