第148話 聖カリダドの使者

文字数 927文字

 私はジクミーロ・ランスロット。

 カリダドの聖騎士で、【正義の審問官】である。



 教皇猊下の勅命により、エルブリタニア帝国第3皇子の調査を行っている。

 彼の行方を捜すのは、簡単だった。

 彼の進路上には、彼しか為し得ない痕跡が必ず残っているのだから。

 彼の今回の旅路の目的とは、一体何なのだろうか?

 彼に対する知りたいと言う欲求が、増していく。

 果たして、彼は私を、聖カリダト教国を、受け入れるのだろうか?

 私は心配になる。

 こうも自由気儘に勝手をして、其れを憚る素振りも見せない。

 エルブリタニア帝国は、其処まで寛大な国だっただろうか?

 西方諸国連合軍二万五千を敗走に追い込み、アッバース王国を事実上粉砕し、イルガリアの奇蹟では、シルフィ族の内乱の隙を見て侵攻した国を撃破した。

 其れだけの武勇を喧伝する気が無いと言うか、気にする素振りすら感じさせない。

 彼に対する知りたいと言う欲求が、日に日に増していく。

 慎重に接触しなければならない。

 相手は、化物皇子と呼ばれる人外の存在なのだから。

 私の言動、行動一つで、聖カリダド教国と敵対するかも知れない。

 其れだけの力が彼にあり、其の力で全てを黙らせる事も出来る。

 アッバース王国が最たるものだった。

 力こそ正義! 力無き正義は、正義では無い!

 そう言い切る狂国を、力で黙らせた怪物!

 其の現場に居た私は、目の前の出来事が信じられなかった!

 ジャイアントの近衛騎士団が、薙ぎ倒され続ける様に。

 ジャイアントの王が、友と認める圧倒的な力の様に。

 無慈悲に呟いた「僕の勝ちで良いかな? それとも纏めて掛かってくる? 纏めてやらないと面倒臭いからね!」と言う言葉に。

 狂国アッバースの中枢である城の中庭で、近衛騎士団に周囲を囲まれている状況で、此の言葉が吐ける、胆力と自信と実力とが信じられなかった。


 件の第3皇子は、聖カリダド教国の敵と為る者なのか?

 其の為人を知りたいと、切実に想い焦がれていた。







 私はジクミーロ・ランスロット。

 カリダドの聖騎士で、【正義の審問官】である。
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