第164話 ラグーンの守護者

文字数 852文字

 俺はジメルナール・ザッドス。

 ザッドス王国の王弟だ。

 現在、ラグーン王国へ進撃中だ!

 我がザッドス王国軍、総勢2200で奇襲攻撃だ!



 王都第7騎士団300を主軸として、道中の各貴族領から集めに集めて、総勢2000までに膨れ上がった。

 我が国のレリナ砦の駐留軍からも、200名を徴収した。

 我らの動きは、ラグーンは捉えていないようだ。

 物見の者達の報告では、ラグーン王国側の国境砦には300名しかいない。

 此の砦を1日で落とし、進軍すればラグーン王都まで3日の道程だ。

 ザッドス王国の領土拡張の贄と為って貰うぞ、ラグーンよ!!!



「申し上げます、王弟殿下! ラグーン側は全く動きがございません! 今が攻め時ですぞ!」

「おお、我らがザッドスの剣と為りて、勝利を捥ぎ取るのだ!!」

「「「おお、お~!!!!!」」」

 ふふふふ、最初出兵を躊躇(ためら)っておった貴族達も、勝利の匂いを嗅いだか?

 此れで兄上に褒めて頂けるぞ!

 俺は馬鹿だが、只の馬鹿じゃない処を見せてやる!

 

 「「「ぎゃあああああああ!!!」」」

 な、なんだ! 何が起こっているんだ?

 ラグーンの砦に進軍中だった我が軍を、天変地異(てんぺんちい)が襲う。

 地面が割れ、兵達が飲み込まれる!

 空から大雨と、雷が降り注ぎ、兵達が爆散される!

 降り注ぐ雨が泥濘と為り、兵達を絡め取り、沈める!



 ば、馬鹿な何なのだ? 先ほどまで、晴天だったではないか?

 何故、此のような事に為るのだ?

 あっ、地面が割れる! うぉおおおおお!

 俺は奈落の漆黒の闇へと墜ちて逝った!

 ああ、兄上! 申し訳ございません!

 兄上、・・・・・・お許し、・・・・・・







 後年、【ザッドスの愚者】と呼ばれたジメルナール・ザッドス。

 其の死を悲しんだ者は、数人しかいない。

 其の中に、ザッドス王国の国王の姿が在ったのは言うまでもなかった。
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