第71話 兄妹
文字数 2,302文字
私はローゼティアス・エルブリタニア。
エルブリタニア帝国第1皇女です。
現在クロース公爵領内のダマスクローズまで2時間程の街道で、賊を装った何者かに私達一行は襲撃を受けています。
クロース公爵領で皇家の馬車を襲う賊などいるはずはありません。
例えクロース公爵家が画策したとしたら、よっぽどの間抜けとしか言えません。
それぐらいあり得ないことなのです。
私のお父様の実家はヘテクロス公爵家です。
四人兄妹の私を無き者にして得をする勢力は、ヘテクロス公爵家以外の3家かエルバビロニア帝国の敵しかいません。
しかし、兄妹の実家が私を現時点で無き者にするメリットがありません。
1番上の兄様は、バレリアス・エルブリタニア。
父様の実家は隣国アルバビロニア大帝国大帝の第5皇子です。
しかし、現在一番帝国皇帝に近いのはバレリアス兄様です。
真ん中の兄様は、シュトリアス・エルブリタニア。
父様の実家は、ここクロース公爵家です。
しかし、現在魔導院で魔導を極めているシュトリアス兄様に実家のクロース公爵家は満足しているとのこと。
元々、クロース公爵家は争いを好まない家柄なのです。
1番下の兄様は、ビクトリアス・エルブリタニア。
父様の実家はデリブリオ公爵家です。
デリブリオ公爵家は武門の家柄でビクトリアス兄様は確かに剣の達人なのですが、良い歳をしてお漏らしをして家出する結構妹としては恥ずかしい兄様なのです。
デリブリオ公爵家の家風では、こう言う陰謀はないと私でも断言できます。
最後に帝国に敵対する国は、数え上げれば切りがありません。
我がエルブリタニア帝国は、隣接国併呑して領土拡大中なのです。
ですから、実際に滅ぼされた国。
現在進行形で侵略されている国。
またはその脅威を感じている国の何れかが、私を某かの意図を持って無き者にすることは十分に考えられます。
しかし、その対応の為に私の父様の実家ヘテクロス公爵家からゼハイド・バルミューレ卿が精鋭騎士100余名を配しているのです。
「グッハァ! 手練れだぞ!」
「馬車をお守れ! 防御陣形を崩すな!」
馬車の中から外の様子を窺っていると、私達警護騎士団が追い込まれ非常に不味い状況なようです。
メイドのサリーは某か思い詰めた表情で懐剣を取り出していました。
「ローゼ様、このままではお命が危険です。ここは私が血路を開きますので、ローゼ様はお逃げ下さい!」
な、サリー? ヘテクロス公爵家の精鋭騎士が太刀打ち出来ない相手にメイドのサリーが叶うはずはありません。
しかし、状況が逼迫していることも事実なのです。
「ローゼ殿下! 申し訳ありません! 残りの者で囲みを崩すしかありません!」
ゼハイド・バルミューレ卿が苦しげに馬車から下車して、徒歩での撤退を促しています。
このままでは全滅してしまうほどの相手なのでしょう。
私はサリーと決死の覚悟で馬車の扉を開きました。
そこには、私を守る為に倒され息絶えた騎士達が幾重にも死して尚、私を守る壁としてその亡骸を盾としている姿が広がっていました。
100余名を数えた騎士達も、半数以上が戦闘不能のようです。
しかし、敵対する相手は500人ほどはいるでしょう。
只、私の警護騎士達を倒している敵はたった1人なのです。
その者は血に塗れた獣そのものでした。
圧倒的な実力差で騎士達が倒されていきます。
公爵家の精鋭騎士達を屠るその者は、一体何者なのでしょうか?
その者は悲しげな目で私を見つめて、何も言わずに唯黙々と騎士達を倒しました。
バルミューレ卿以外の騎士達が倒された時、私は死を覚悟しました。
私はエルブリタニア帝国第1皇女、ローゼティアス・エルブリタニアです!
虜囚の辱めを受けるなら、我が手で己の身を処す覚悟は出来ています!
お母様...先立つ不孝な娘をお許し下さい!
私は懐剣を抜き放ち最後の時に備えます。
そして、今まさにバルミューレ卿と件の獣が切り結ぼうとする時でした。
私達を囲う集団の一郭から悲鳴が上がり、囲みが崩れたのです!
そして、その方向を驚愕の様子で見た獣がバルミューレ卿に当て身をして、一直線に私を目掛け斬り掛かって来ました。
余りの早業に、私は一歩も動けませんでした。
そして、私はこともあろうに怖さの余り目を瞑ってしまったのです。
しかし、いつまで経っても痛みはありませんでした。
そして、そっと目を開けるとサリーのにっこりと微笑んだ顔が見えました。
でも、その顔は段々と血の気を失っていきそのままサリーは崩れ落ちました。
う、嘘! サリー! 私には姉はいませんが、私はサリーを姉のように思っていました!
嫌だ、嫌~! サリー! 私は声も出ずに心の中で叫びました!
そんな私に獣は容赦なく悲しそうな目をして、剣を私の胸に刺そうとしたのです。
しかし、その剣は私には刺さりませんでした。
何故なら、その剣は根元から絶ち切られていたのです。
「ごめん、ローゼティアス! 遅くなった!」
その獣の剣を絶ち切った私よりも少し年上の少年が申し訳なさそうにして、私に謝罪しました。
そして、その少年は私達を囲む賊達に向かってこう告げたのです。
「僕の妹をよくも泣かしたな! 僕はビクトリアス・エルブリタニア! お前達を討ち滅ぼす者だ!」
エルブリタニア帝国第1皇女です。
現在クロース公爵領内のダマスクローズまで2時間程の街道で、賊を装った何者かに私達一行は襲撃を受けています。
クロース公爵領で皇家の馬車を襲う賊などいるはずはありません。
例えクロース公爵家が画策したとしたら、よっぽどの間抜けとしか言えません。
それぐらいあり得ないことなのです。
私のお父様の実家はヘテクロス公爵家です。
四人兄妹の私を無き者にして得をする勢力は、ヘテクロス公爵家以外の3家かエルバビロニア帝国の敵しかいません。
しかし、兄妹の実家が私を現時点で無き者にするメリットがありません。
1番上の兄様は、バレリアス・エルブリタニア。
父様の実家は隣国アルバビロニア大帝国大帝の第5皇子です。
しかし、現在一番帝国皇帝に近いのはバレリアス兄様です。
真ん中の兄様は、シュトリアス・エルブリタニア。
父様の実家は、ここクロース公爵家です。
しかし、現在魔導院で魔導を極めているシュトリアス兄様に実家のクロース公爵家は満足しているとのこと。
元々、クロース公爵家は争いを好まない家柄なのです。
1番下の兄様は、ビクトリアス・エルブリタニア。
父様の実家はデリブリオ公爵家です。
デリブリオ公爵家は武門の家柄でビクトリアス兄様は確かに剣の達人なのですが、良い歳をしてお漏らしをして家出する結構妹としては恥ずかしい兄様なのです。
デリブリオ公爵家の家風では、こう言う陰謀はないと私でも断言できます。
最後に帝国に敵対する国は、数え上げれば切りがありません。
我がエルブリタニア帝国は、隣接国併呑して領土拡大中なのです。
ですから、実際に滅ぼされた国。
現在進行形で侵略されている国。
またはその脅威を感じている国の何れかが、私を某かの意図を持って無き者にすることは十分に考えられます。
しかし、その対応の為に私の父様の実家ヘテクロス公爵家からゼハイド・バルミューレ卿が精鋭騎士100余名を配しているのです。
「グッハァ! 手練れだぞ!」
「馬車をお守れ! 防御陣形を崩すな!」
馬車の中から外の様子を窺っていると、私達警護騎士団が追い込まれ非常に不味い状況なようです。
メイドのサリーは某か思い詰めた表情で懐剣を取り出していました。
「ローゼ様、このままではお命が危険です。ここは私が血路を開きますので、ローゼ様はお逃げ下さい!」
な、サリー? ヘテクロス公爵家の精鋭騎士が太刀打ち出来ない相手にメイドのサリーが叶うはずはありません。
しかし、状況が逼迫していることも事実なのです。
「ローゼ殿下! 申し訳ありません! 残りの者で囲みを崩すしかありません!」
ゼハイド・バルミューレ卿が苦しげに馬車から下車して、徒歩での撤退を促しています。
このままでは全滅してしまうほどの相手なのでしょう。
私はサリーと決死の覚悟で馬車の扉を開きました。
そこには、私を守る為に倒され息絶えた騎士達が幾重にも死して尚、私を守る壁としてその亡骸を盾としている姿が広がっていました。
100余名を数えた騎士達も、半数以上が戦闘不能のようです。
しかし、敵対する相手は500人ほどはいるでしょう。
只、私の警護騎士達を倒している敵はたった1人なのです。
その者は血に塗れた獣そのものでした。
圧倒的な実力差で騎士達が倒されていきます。
公爵家の精鋭騎士達を屠るその者は、一体何者なのでしょうか?
その者は悲しげな目で私を見つめて、何も言わずに唯黙々と騎士達を倒しました。
バルミューレ卿以外の騎士達が倒された時、私は死を覚悟しました。
私はエルブリタニア帝国第1皇女、ローゼティアス・エルブリタニアです!
虜囚の辱めを受けるなら、我が手で己の身を処す覚悟は出来ています!
お母様...先立つ不孝な娘をお許し下さい!
私は懐剣を抜き放ち最後の時に備えます。
そして、今まさにバルミューレ卿と件の獣が切り結ぼうとする時でした。
私達を囲う集団の一郭から悲鳴が上がり、囲みが崩れたのです!
そして、その方向を驚愕の様子で見た獣がバルミューレ卿に当て身をして、一直線に私を目掛け斬り掛かって来ました。
余りの早業に、私は一歩も動けませんでした。
そして、私はこともあろうに怖さの余り目を瞑ってしまったのです。
しかし、いつまで経っても痛みはありませんでした。
そして、そっと目を開けるとサリーのにっこりと微笑んだ顔が見えました。
でも、その顔は段々と血の気を失っていきそのままサリーは崩れ落ちました。
う、嘘! サリー! 私には姉はいませんが、私はサリーを姉のように思っていました!
嫌だ、嫌~! サリー! 私は声も出ずに心の中で叫びました!
そんな私に獣は容赦なく悲しそうな目をして、剣を私の胸に刺そうとしたのです。
しかし、その剣は私には刺さりませんでした。
何故なら、その剣は根元から絶ち切られていたのです。
「ごめん、ローゼティアス! 遅くなった!」
その獣の剣を絶ち切った私よりも少し年上の少年が申し訳なさそうにして、私に謝罪しました。
そして、その少年は私達を囲む賊達に向かってこう告げたのです。
「僕の妹をよくも泣かしたな! 僕はビクトリアス・エルブリタニア! お前達を討ち滅ぼす者だ!」