第130話 アルグリアに吹く風

文字数 1,123文字

 私はバルナ・レルクール。

 娼館【シルフィの風】を経営しております。

 昨日は私の生誕祭と言う名目で、お客様にお集まり頂き大変儲かりました。

 人は、内緒で、秘密で、と言う言葉に弱い者です。

 但し、相手を見極めないと大変なことになります。

 口の軽い者は、この遣り方には合いません。

 口に固いお客様だけに通用する、いえお聞かせする話でございます。

 私の商売は、娼館経営だけではありません。

 本当の商売は、武器商人なのです。

 娼館は、隠れ蓑と情報収集の為の最善の商売なのです、ふっほほほほ。



「旦那様、【応接室】にお客様が参っております!」


 何だ、こんな朝早くに、折角の金の計算が出来ないではないか?

 う、うん? 【応接室】だって!

 私は急いで扉を開け、小間使いのララァに詳細を聞きました。

 それにしても、見窄らしい格好ですね。

 もっと増しな服装にしろと命令したのですが、汚れ仕事専用の服の方が効率が良いと言われ、それならばと許していました。

 只、朝一でその格好を見るのは気分が余り良くないですねぇ。

 ふむ、何々、朝一でエルフの少年が来て、ララァを買い取りたいと言ってきただって?

 ふむ、え! 執事長が貴賓室で対応しているだって?

 ふむ、ハンカチを見てから執事長の態度が激変しただって?

 おいおい、うちの執事長は王家に務めていた元執事だぞ。

 王族が来ても、眉一つ動かさない奴だぞ!

 と言うことは、他国、其れもエルフの王族か?

 いや、エルフの国は、アルバビロニア大帝国とエルブリタニア帝国の二国のみ。

 と言うことは、皇族か。

 ハンカチには、国の紋章が縫い取られていると見た。

 ふむ、でも解せん。

 皇族が何故、ララァを買いに来たんだ、其れも、たった一人で。

 ふむ、全く解らん。

 はっ! ララァの件は、飽くまでも建前と言うことではないか。

 本当の狙いは別にあって、私に関係あるとすれば、武器か?

 むむむ、確かに最近、武器商売が大繁盛しているのは間違いない。

 飛ぶように売れていく理由も、知っている。

 何でもシルフィ族の各国の王子達が、革命ごっごをするんだとか、ふっほほほほ。

 良い気なものだ。

 シルフィ族は自由だと言う。

 確かに、自由の気風はあるが、自由を守る為に、王族が身を粉にして働いている事実を、国民は知らない。

 知ろうともしない。

 良い気なものだ。

 どれ、件のエルフの少年に会ってくるか。

 ララァなら安くお譲りしても問題はない。

 反って皇族と縁が紡げて、ボロ儲けだわい、ふっほほほほ!
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