第138話 在るがままを、受け入れよう

文字数 1,031文字

 我はシル・ミケラン。

 シルフィの演劇の役者だ。

 ある酒場で、演劇の練習の興が乗り、酔いに任せて話した事が実現してしまった。

 今では、我は【稀代の革命家】・【酔いどれ軍師】と呼ばれる始末。

 演劇の道に戻ろうにも、此の【シルフィ独立戦争】に依り、戻れなくなってしまった。

 違った意味で名を売ってしまった我は、劇場での芝居世界ではなく、現実の世界での芝居を必要とされる。

 我はイルガリアの革命軍師として、イルガリア共和国の建国式典に出席している。

 針の筵とは、まさに此の事だった。

 列席している

が、様々の様相で、我を見ている。

 憎しみの眼差し、畏敬の眼差し、訝しげな眼差しと人様々だが、我の精神力はゴリゴリと削られていく。

 イルガリア王国を母体として、ノリス・タックロ・グトネス・ダブリン・ゲオア・ピクルの6ヵ国が統合され、共和制の政治を敷く。

 王制には王制の良さがあった。勿論、悪い処もある。其れは共和制も同じである。

 完璧な政治形態など、存在しないのだ。

 何故ならば、時代は、時は、過ぎていくからだった。

 其の時は、其の時代は適合出来ても、状況が変われば、不都合が出てくるのは、世の常だ。

 況してや、共和制ならば、王制のように無能な為政者の災いを受ける頻度は下がるだろうが、有能な為政者の恩恵を受ける頻度も下がるのだ。

 王制は、良いも悪いも即効性に優れる。

 共和制に、即効性はない。大多数の理解を得なければ、いかに優れた政策であろうと実施されない。

 但し、シルフィ族は選んだのだ。

 皆で話合い、皆で判断し、皆で実行する、何者にも縛られない(王がいない、皆平等と言う意味)自由を得て、自由と言う名の牢獄(自分勝手なシルフィに、他人と協調する術はない)に閉じ込められた。

 我は此の事態を引き起こした責がある。

 今までは責を、自分の自由を贄にして、国民の自由を守護してきた王達が背負っていた。

 其れを理解した、王の息子達が決起した。

 初めての共和制は、様々の困難に直面する。

 赤子の国が、立ち上がるのに、どれ程の年月が掛かるのだろうか?

 我は演じなければいけない、【稀代の革命軍略家】を、此のイルガリア共和国が、一人で歩く其の日まで。




 我はシル・ミケラン。

 シルフィの演劇の役者だ。

 現在の演目は、【稀代の革命軍略家】だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み