第63話 エリクサー

文字数 1,633文字

 我輩は鳥である。

 古の盟約の獣の1柱、《不死鳥》ラフレシア。

 古の盟約の獣達5柱が、我輩の縄張りであるアゾット炎獄にビズと現れて我輩は自由を手に入れた。

 自由に制限無く大空を飛び回れる喜びに、我輩は感無量である。

 ほう、ここがアプリが治める誓約の地“ヘルメゲン平原”であるか。

 アゾット炎獄と比べて外の世界は燃えていないと、初めて我輩は知ったのである。

 我輩の配下達が生きるアゾット炎獄の環境が、このアルグリアに生きる他の生物にとって過酷、否、死に至る地であると認識した。

 故に誰も我輩の地に訪れなかったのであるか...。

 うん? では我輩の地に訪れたビズ達が異常であると言うことであるか?

 それに我輩も外の世界で快適に過ごせている? 我輩は物知りさんであるビズに訪ねたのである。

「ラフ、それは僕の力の一端なんだよ」

 軽く話すビズに我輩は驚愕するのである。

 我輩が古の盟約の地より、盟約の枷から解き放たれ外の世界で飛べるのは全てビズの力なのである。

 ビズは裏技と簡単に言うが、神の誓約を覆すと言うことの異常さを本当に理解しているのだろかと我輩は考えるのである。

 
 アプリとの一昼夜に及ぶ戦闘を目の当たりにして、ビズの強さは古き盟約の獣を超えるものだと我輩は確信したのである。

 アプリも仲間に加わり、我輩も嬉しい。

 否、楽しい。

 我輩達古の盟約の獣達10柱の内、7柱までもが盟約の地を離れこのように旅が出来るなど我輩含め誰も考えもしなかったのである。

 そんな我輩達を率いるビズの旅の目的は3つ。

 強くなること。

 エリクサーを手に入れること。

 妹を助けること。

 ビズには未来を見通す力があるのであろう。

 全てはビズの妹を救う為で、エリクサーも転ばぬ先の杖だと言う。

 ふむ、ビズは何も考えてないようでいて考えている。

 不思議な存在である。


 迷いの森と呼ばれるこの地は、森に入ると方向感覚が狂い力無き者は二度と森の外へ出れない所以からそう呼ばれているそうだ。

 ビズは初めて来た場所のことを、何でも良く知っている物知りさんだ。

 しかし、その迷いの森を確かな足取りで進むビズには、我輩達に見えないものが見えるのだと我輩は確信する。

 これもビズの力なのであろう。

 ビズとは一体何者であるか? 謎は尽きないのである。

 おっ、迷いの森に住むシルフィの老人も我輩同様にビズに何者か問うておる。

 しかし、ビズは何故いつも恥ずかしそうにビシッとポーズを決めて言うのか?

 恥ずかしいなら止めれば良いと我輩は思うのである。

 我輩もアプリも、そしてこの老人にも“僕はお前の願いを叶える者だ!”とお決まりの言葉を告げるビズを格好良いと思ったのは内緒である。

 あっ! 老人が興奮の余り息を引き取った...え、マジであるか!

 焦って老人にエリクサーをぶっ掛けるビズ! おっ、生き返った!

 あっ! 又しても興奮し出した老人が胸を押さえお亡くなりに為る!

 何故か遠い目をしたビズが再度エリクサーを老人にぶっ掛ける!

 おっ、生き返った! ビズが説教をしている! 

 正座して詫びる老人を見て、エリクサーってお亡くなりに為った者でも生き返らせることが出来る凄い薬であると驚愕した我輩である。

 
 我輩達古の盟約の獣の10柱は、アルグリア大陸では十の災厄(アンタッチャブル)と呼ばれている。

 そして、我輩達はお亡くなりになっても1日経てば蘇る。

 それもお亡くなりになった時よりも存在値が更に強くなり、状況に依り弱点も克服される。

 アプリが蘇った時にビズは我輩達にそう語り、こう付け加えた。

「でも蘇るからと言って簡単にお亡くなりにならないでね。だって皆は僕の大切な仲間なんだからね!」

 仲間か...良い響きの言葉なのである。
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