第42話 フューダー大王国

文字数 2,041文字

 俺はレディオス・ベクシス。

 諜謀機関《隠者の手》所属の工作員だ。

 現在、観察対象者と行動を共にしている。

 非常に興味深い人物だと言っておく。

 俺達はアルバビロニア大帝国の帝都プロローズを出発して、ハルベルト山脈へ向かった。

 ハルベルト山脈には、その山脈を縄張りにする十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《氷狼》エンプレスがいる。

 普通なら十の災厄(アンタッチャブル)の縄張りに入ることは最大の禁忌なのだが、観察対象者と過ごすうちに



 もう一度言う、慣れてしまった。

 観察対象者なら十の災厄(アンタッチャブル)でも何とかする。

 そう思える自分に驚くが、十の災厄(アンタッチャブル)の《黄金竜》エクスナギアと《禍蛇》の番の蛇である《巨蛇》ヨルムガルドと《虚蛇》ウトボロスの義理の息子であり、《黒獣》エクリプスが友達と言う、観察対象者が起こした数々の異常現象に俺の感覚が毒されてしまった。

 俺には物事の“答え”が解る。

 例えるなら、ある計算式がある。

 普通は計算して“答え”を出すが、俺は計算せずに

で“答え”が解るようになったと言うことだ。

 そんな俺が観察対象者を見れば、十の災厄(アンタッチャブル)と同様の“化け物”だと言うことは解る。

 つまり、観察対象者も十の災厄(アンタッチャブル)と同じ

を行える存在だと言うことだ。

 俺の双肩にエルブリタニア帝国のいや、アルグリア大陸の未来がずっしりと重く伸し掛かる。

 しかし、観察対象者の漠然とした存在の“答え”が解るのはそこまでだ。

 観察対象者は自身が明らかに知り得ないはずの情報を知っている。

 推測は出来るが確かな“答え”が出ない。

 観察対象者の情報が圧倒的に足りないからだと



 そして、観察対象者は通常のエルフの少年ではない。

 エルブリタニア帝国第3皇子の身分と初代皇帝陛下が持っていた紅玉の瞳(紅眼)の持ち主だ。

 それにも増して厄介なのは観察対象者が“残念な天然さん(呆けの究極種)”と言う、天然さん(呆け)の中の天然さん(呆け)だと言うことだ。

 つまり、意味不明の予測不能な存在が俺の“観察対象者”だった。

 ハルベルト山脈の極寒の環境で、俺達は街中を歩く服装で進む。

 これも観察対象者の力の一端だろう。

 やっぱり、そうなると思った。

 氷狼が困った目で俺達を見る。

 諦めろ、俺達は心の中で氷狼に無慈悲な言葉を告げる。

 そして十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《氷狼》エンプレスが仲間になった。

 霊山“不死山”をその新しい仲間、氷狼の背に乗り空中を移動しながら頂上まで向かう。

 もう何でもありだな。

 やっぱり、そうなると思った。

 え、じゃん拳? 麒麟も困ってるぞ、どうにかしてくれって顔に書いてるある。

 そして十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《麒麟》パラグラムが仲間になった。

 そうして、ここはガイアス王国王都ブリュンヒルトにある水の神殿の地下深く、塩水の地底湖だ。

 観察対象者が女性物の

服を手に持ち湖に向かって叫ぶ。

「僕はビクトリアス・エルブリタニア! 《海竜》リヴァイアサン! お前の願いを叶える者だ!」

 え、何言ってんだコイツ? 不敬だが俺は素直にそう思った。

 皆も同じ表情だったのは必然だ。

 しかし、海竜の様子と観察対象者の態度から“答え”が出る。

 やっぱり、そうなるのかと思った。

 海竜が

して観察対象者が用意した

の女性物の服を嬉しそうに着ている。

 そして、十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《海竜》リヴァイアサンが仲間になった。


 今はフューダー大王国の華厦山を目指している。

 十の災厄(アンタッチャブル)

出来るのは解った。

 ふむ、リヴァイアサンが巨体の筋肉質の男なのも良いだろう。

 男でも女装するのも良いだろう。

 人の趣味を穿鑿(とやかく)言う程、俺も野暮じゃない。

 だが、俺の腕にリヴァンの腕が絡んでるのは理解出来ない(良くない)

 だ、だ、誰か助けて欲しい。

 俺の本能が悲鳴を揚げる! 地底湖の湖面をドッパパ~ン! ザッポ~ン! と突き破り出現した巨大なドラゴンが俺達を睥睨した瞬間を俺は忘れない。

 その存在が俺の腕に自分の腕を絡めてこう言うんだ。

「レディって、本当に美味しそう(良い男)♥」

 ゾクゾクゾク、あああああ!

 俺は物事を認識するとその“答え”が解る。

 解りたくない“答え”も解る。

 そう俺には

“答え”が解ってしまった。

 そう解ってしまったんだ! ぎゃあああああ! チーン!
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