第3話 新しい先生
文字数 1,926文字
剣術の先生と勝負を繰り返した後、
『ぽ~ん♪ 個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》の個体レベルが上がりました!』
ってシスが言うので、何って? 心の中で聞き返したら、
『これが私の存在意義 よ!』
って力説されたんだけどよく解らなかったよ...変なシス。
剣術の先生と勝負した翌々日、その長剣(片手剣)術の先生だったデルパオロ卿 の紹介で、双剣術の新しい先生が家にやって来た。
見た瞬間、僕にはびびびっと解ってしまった。
この新しい先生が駄目な大人だってことを、解ってしまったんだ。
執事のビクターに紹介された新しい先生は、僕を見ずにメイドのメアリーを口説いていた。
それも土下座をしながら...。
「ごほん! 初めて御意を得ます殿下!」
メアリーに振られて初めて僕に気付いた新しい先生は、片膝をつきながら、まるで何ごともなかったように僕に挨拶をしてきた。
もう遅いよ? 手遅れだよ先生?
そして、ビクターから前任者のデルパオロ卿の推薦状を渡され、中身を読むとデルパオロ先生は
また、
少し? かなり? の間違いでは?
って内心デルパオロ先生に突っ込みを入れながら、新しい先生を見つめていると、何故か新しい先生が僕を凝視してふむふむと頷き、失礼ながらと言いながら僕の体を触りだした。
そして、メアリーにブッ飛ばされていた。
デルパオロ先生? 先生をボロボロにしたことは謝ります。
どうか
はっ。これはもしかして仕返し?
って考えていると新しい先生は何ごともなかったように復活していた。
それから何ごともなかったように中庭で双剣の授業が始まった。
もちろんメアリーの監視付きで。
先生は僕と数合打ち合ってから、真面目な顔で僕の目を見つめながら説明してくれた。
「殿下。才能とは磨いてこそ真価を発揮すると卿 は考えます」
宝石の原石は綺麗だけど研磨した宝石は、もっと綺麗で価値があると。
最高の宝石の原石は、最高の宝石職人が手掛けてこそ、最高の輝きと価値を得ることができると。
つまり、僕は宝石の原石、双剣の才能はあるけどスキル頼みで技術が伴っていない。
スキルのごり押しでも戦う相手によっては勝てる。
でも自分よりも実力のある相手には通用しないこと。
一流の双剣の先生が僕を指導してこそ、僕の才能は真価を発揮すると。
そして、先生は僕に問う。
「強くなるには自分よりも強い相手と戦うことが大事です。戦うと言うことは傷付くと言うことです。戦うということは命を奪うということです。そして、逆に殿下の命も奪われても仕方ないと言うことです。殿下にその覚悟がおありですか?」
真剣な目で、問い掛ける先生にすぐに答えられない僕。
双剣の天賦の才に喜んで、より強くなろうと思っただけ。それだけだった。
僕の剣がいずれ生き物の命を奪う。
怖かった。
恐ろしかった。
そう僕には覚悟がなかった。
僕ももしかしたら死ぬかもしれない。
怖かった。
恐ろしかった。
そう僕には、覚悟がなかったんだ。
『ビズ...あなたは何になりたいの? あなたが何になろうとずっと私はあなた の相棒 よ!』
シスはいつも僕に優しく してくれる。
そう僕は何に成りたかったのか?
1人で部屋で泣いていた僕に初めて出来た友達で相棒。
その言葉が僕に力をくれる。
あの時、何故僕は泣いていたのか。
僕は、
「あります。よろしくお願いします」
ゆっくりと静かにそう答えた僕に、先生はニヤリと笑った。
「合格です! 殿下、私の(剣術)全てをお教えしましょう! 正直、気に入らない人物なら断ることも考えていました。失礼の段、御許し下さいませ」
先生は真剣な眼差しで僕を見つめた後、膝まずき僕に許しを請うてきた。
僕はそれを許し新しい先生の生徒になった。
この新しい先生、エドバルト・ナインテール卿とは、終生に渡って付き合っていくことになることを、この時の僕は全く思いもしていなかった。
その後、格好を付けた先生が、チラッとメアリーを盗み見たことを僕は忘れない。
台無しだよ? 先生?
『ぽ~ん♪ 個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》の個体レベルが上がりました!』
ってシスが言うので、何って? 心の中で聞き返したら、
『これが私の
って力説されたんだけどよく解らなかったよ...変なシス。
剣術の先生と勝負した翌々日、その長剣(片手剣)術の先生だったデルパオロ
見た瞬間、僕にはびびびっと解ってしまった。
この新しい先生が駄目な大人だってことを、解ってしまったんだ。
執事のビクターに紹介された新しい先生は、僕を見ずにメイドのメアリーを口説いていた。
それも土下座をしながら...。
「ごほん! 初めて御意を得ます殿下!」
メアリーに振られて初めて僕に気付いた新しい先生は、片膝をつきながら、まるで何ごともなかったように僕に挨拶をしてきた。
もう遅いよ? 手遅れだよ先生?
そして、ビクターから前任者のデルパオロ卿の推薦状を渡され、中身を読むとデルパオロ先生は
不慮の事故
で、新しい先生を直接僕に紹介出来ないことを謝っていた。また、
少し問題
はあるけど双剣の腕前は、僕の先生に相応しいって内容だった。少し? かなり? の間違いでは?
って内心デルパオロ先生に突っ込みを入れながら、新しい先生を見つめていると、何故か新しい先生が僕を凝視してふむふむと頷き、失礼ながらと言いながら僕の体を触りだした。
そして、メアリーにブッ飛ばされていた。
デルパオロ先生? 先生をボロボロにしたことは謝ります。
どうか
新しい先生
を引き取ってもらえないでしょうか?はっ。これはもしかして仕返し?
って考えていると新しい先生は何ごともなかったように復活していた。
それから何ごともなかったように中庭で双剣の授業が始まった。
もちろんメアリーの監視付きで。
先生は僕と数合打ち合ってから、真面目な顔で僕の目を見つめながら説明してくれた。
「殿下。才能とは磨いてこそ真価を発揮すると
宝石の原石は綺麗だけど研磨した宝石は、もっと綺麗で価値があると。
最高の宝石の原石は、最高の宝石職人が手掛けてこそ、最高の輝きと価値を得ることができると。
つまり、僕は宝石の原石、双剣の才能はあるけどスキル頼みで技術が伴っていない。
スキルのごり押しでも戦う相手によっては勝てる。
でも自分よりも実力のある相手には通用しないこと。
一流の双剣の先生が僕を指導してこそ、僕の才能は真価を発揮すると。
そして、先生は僕に問う。
「強くなるには自分よりも強い相手と戦うことが大事です。戦うと言うことは傷付くと言うことです。戦うということは命を奪うということです。そして、逆に殿下の命も奪われても仕方ないと言うことです。殿下にその覚悟がおありですか?」
真剣な目で、問い掛ける先生にすぐに答えられない僕。
双剣の天賦の才に喜んで、より強くなろうと思っただけ。それだけだった。
僕の剣がいずれ生き物の命を奪う。
怖かった。
恐ろしかった。
そう僕には覚悟がなかった。
僕ももしかしたら死ぬかもしれない。
怖かった。
恐ろしかった。
そう僕には、覚悟がなかったんだ。
『ビズ...あなたは何になりたいの? あなたが何になろうとずっと私は
シスはいつも僕に
そう僕は何に成りたかったのか?
1人で部屋で泣いていた僕に初めて出来た友達で相棒。
その言葉が僕に力をくれる。
あの時、何故僕は泣いていたのか。
僕は、
ある覚悟
を決めた。「あります。よろしくお願いします」
ゆっくりと静かにそう答えた僕に、先生はニヤリと笑った。
「合格です! 殿下、私の(剣術)全てをお教えしましょう! 正直、気に入らない人物なら断ることも考えていました。失礼の段、御許し下さいませ」
先生は真剣な眼差しで僕を見つめた後、膝まずき僕に許しを請うてきた。
僕はそれを許し新しい先生の生徒になった。
この新しい先生、エドバルト・ナインテール卿とは、終生に渡って付き合っていくことになることを、この時の僕は全く思いもしていなかった。
その後、格好を付けた先生が、チラッとメアリーを盗み見たことを僕は忘れない。
台無しだよ? 先生?