第53話 観測者は笑う

文字数 1,371文字

 私はアレクサンドラ・アルバビロニア。

 エルブリタニア帝国第3皇子ビクトリアス・エルブリタニア殿下のなんちゃってメイド長をしています。

 現在は、殿下の家出を観測し、その記録(日記)を愛しのアリスに送っています。

 毎日、良い出来ごと(イベント)には事欠きません。

 世界樹の森を後にした殿下は、深淵の森の更に奥にある漆黒の森に躊躇なく入って行きました。

 ゴクリ。

 十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《黒獣》エクリプス。

 一番厄介な古の盟約の獣。

 私は殿下の正気を疑いましたが、お付きの間抜け(オピニオン)と言う鈴が鳴るまでは様子を見ることにしました。

 え、殿下の頭の子虎は...へー、十の災厄(アンタッチャブル)って、縄張りから自由に出れるんだ。

 長年生きている私も知らない事実でした。

 なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、私の

国へ《黒獣》を連れ行くとは、天晴れ! 殿下、あなたは逝かれてます。

 なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、ハルベルト山脈...《氷狼》エンプレスを仲間に加えるとは、なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、霊山《不死山》...《麒麟》パラグラムを仲間に加えるとは、なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、地底湖...《海竜》リヴァイアサンを仲間に加えるとは、なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、オルスカ闘技会...優勝するとは、なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、2000人の弟子をとるとは、なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。

 ほう、殿下の弟子が、魔王に為るとは、なんて良い出来ごと(イベント)だ、カキカキ。


『おい、アレサ。俺達に何か用か?』

が何の用かしら?」

「おいら、付き纏われるの嫌いだ!」

「あら、久し振りね。何時見ても

のね?」

「煩いわね。私は貴方達の仲間のビクトリアス殿下の母親(アリス)から、息子(ビクトリアス殿下)を見守るように頼まれてるの。だから放っておいてちょうだい!」

 本当にコイツらウザイ。

 私に指図するなら相手になるわよ。

 え、それなら良いって? 貴方達、一体どうしたの? 十の災厄(アンタッチャブル)が大人しく引き下がるなんて!

 え、ビズに危害を加えないなら問題ないって、貴方達一体どうしたの? 

 貴方達、古の盟約の獣なのよ? 何、呆けてるのよ! 殺るか殺られるかでしょう?

 え、ビズといる間は、盟約なんて糞食らえ? マジか、貴方達。

 ゴクリ、神に喧嘩売るって言うの?


「「「『ビズの敵なら、神でも相手になるぜ(わ)!』」」」

 うふふふふふ、あははははは。

 そう、貴方達

のね。

 まあ、いいわ。

 私もアリスに出会って

もの。


 私の可愛い可愛いアリス。

 私はあなたさえいれば他には何もいらない。

 ああ、私の可愛い可愛いアリス。

 あなたが望むならアルグリア大陸の全ての生き物を殺してあげる。

 うふふふふふ。

 
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