第172話 皇女は想う

文字数 1,497文字

 私はローゼティアス・エルブリタニア。

 エルブリタニア帝国第1皇女です。

 私には3人の兄様達がいます。

 上の2人の兄様達は優秀で私も会ったことがあるのですが、根暗だと噂の一番下のビクトリアス兄様だけはお会いしたことはありませんでした。



 そんなビズ兄様に窮地を救って頂いて、尚且つ私の大切な者達を文字通り蘇らせて貰ったのでした。

 ビズ兄様のお仲間は、ゴホン! 

ですが、私には本当に良くして頂きました。

 特に、エクス様には、可愛がって頂き感謝しかありません。

 あのエクス様が、【黒獣】と呼ばれる十の災厄(アンタッチャブル)のエクリプス様だなんて信じられません。

 ビズ兄様の頭の上で、フニャッと寛がれている様は、愛苦しくて堪りません。

 あっ、黒猫のような見た目ですがエクス様は虎なんですよ。

 其れにしても、ビズ兄様はいつ頃お戻りに為るのかしら?

 もう旅立って半年は経つけど、毎月便りも来るので心配はしていませんが、正直寂しいですね。

 ビズ兄様と愉快な仲間達との掛け合いを見ているだけで、心が和み落ち着くのですから。



「ローゼ。僕、ちょっと旅に出てくるよ!」

 何処が、ちょっとなのでしょうか?

 ビズ兄様は、仲間内では【残念な天然さん】と呼ばれています。

 理由は推して知るべしです、・・・・・・はぁ。

 十の災厄(アンタッチャブル)にも勝てるビズ兄様は凄く強い武人ですが、少し、・・・・・・かなり残念な性格なのです。残念ながら、・・・・・・

 其のビズ兄様の言動に振り回されている愉快な仲間達の皆様、本当にご免なさい。

 残念な兄様に代わって、謝罪致しますわ。

 まあ、あの仲間の方々なら笑って済ましてくれそうなのが逆に申し訳ないのですが。



「ローゼ様、ビクトリアス殿下からお便りが来ております」

 サリーが待ちに待ったビズ兄様からの手紙を携えて、洗練された帝国マナーで私に接します。

 ふっふふふ。でも、私は知っているのですよ。

 こんなサリーが現在絶賛婚活中だと言う事を。

 私に気取られないようにコソコソとしているようですが、私もビズ兄様に師事した身ですよ?

 ビズ兄様から、念話を修得させて頂きました。

 此の念話の凄い処は、余り大きな声では言えないのですが、習熟していくと相手の心の声が聞こえるのです。

 私は窓辺で囀る小鳥達と毎日お喋りをして、念話の習熟度を上げました。

 そして最近では内緒ですが、時々人の心を覗くのです。

 お澄まし顔のサリーの心の声もバッチリですよ。

『はぁ~、羨ましいな~メアリー姉様は。誰か紹介してくれないからしら、・・・・・・』

 おっと、仕事中に何と不謹慎な。でも可哀想なサリー。お見合いも連戦連敗中なのですから。

 まあ、原因はサリーに在る訳ではありません。

 そう、全て私に在るのです。

 私よりも先に幸せに為るとは思っちゃいけません。

 全て私が潰して征きます。

 だってサリーは私の姉様ですもの。

 幸せに為って貰いたい思いと、先に幸せに為って貰っては困る思いとの板挟みで、私も心苦しいのですよ?

 本当ですよ? 自分で言っているから間違いはありません。



 何々、・・・・・・ビズ兄様。

 まだ旅は続くようですね。

 元気に戻って来られることを祈っております。







 私はローゼティアス・エルブリタニア。

 エルブリタニア帝国第1皇女です。

 残念な天然さんの妹ですわ。
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