第11話 反抗期

文字数 2,305文字

 私はビクター・シュトロゲン。

 執事です。

 離宮に

が来るようになって、1ヶ月。

 殿下が凄く心配です。

 何故なら、

と関わっているのですから。

 当然です。

 その上、こともあろうに

メイド長を口説くとは。

 正気とは思えません。

 

アレサですよ? 

ですよ。

 アリトリアス女皇帝陛下が、唯一頭が上がらない

アレサを口説くとは。

 凄く心配です。

 殿下。

 やらかしました。

 

が。

 こともあろうに殿下を城下に連れ出すとは、何ごとですか。

 それも娼館に連れ込むとは。

 ふむ。

 ここは帝国護剣の下部組織。

 たしか諜謀部門、『隠者の手』の隠れ家ですね。

 私は気配を断ち、娼館に忍び込む。

 ああ。

 何故、私に気付かない。

 弟子失格ですね。

 隠者の手の首領である私の弟子、バジュマの目前で気配を表した。

「この未熟者め」

 突然表れた私に、終始狼狽しながらもバジュマは、招かれざる訪問者に

ことを伝えた。

「師匠......(ズラ)()れてます」

 私は顔に青痣を作ったバジュマに案内をさせ、隠し部屋から殿下の様子を観察する。

 なんとサキュバスが殿下を襲っている。

 よし。

 潰そう。

 こんな組織は、存在してはいけない。

 この塵虫めが。

 怒りに震える私を見て、顔色が悪いバジュマ。

 うん、あれは? 

 様子を見ているとダリアが、扇情的な服で現れた。

「あら。エルさま。いらっしゃいませ」

 

もか。

 弟子2号よ。

 

とグルなんだな。

 私は顔に大きな青痣を作ったバジュマに案内させ、殿下達3人の様子を覗ける隠し部屋に移動した。

 

は弟子2号に鞭と靴でボコボコにされていた。

 ふふふふふ。

 愉快。愉快。堪らんな。

 流石、弟子2号......容赦ないな。

 天晴れ。

 うん? 弟子2号よ。

 誰に、

を使ってるんだ?

「こんな変態にこんな可愛い弟がいるなんて、お姉さんビックリしたわ」

 私がビックリしたわ! 弟子2号よ。

 命は要らないようですね。

 おっと。

 私としたことが。

 更に顔色が悪くなっていくバジュマを尻目に、少し漏れた殺気を消す。

「おい......僕の奴隷になれ!」

 殿下が弟子2号の腰に抱き付き、そう良い放った。

 殿下。

 大きくなられましたな。

 殿下がそんな言葉を使う日が来るとは。臣は満足です。

 感無量で、頭が禿げそうです。

「は...はい」

 あ。

 弟子2号が殿下に服従した? 

 殿下。

 恐ろしい子。

 紅眼恐るべし。

 うん? 

 

は、何故いつも以上に間抜けずらなんだ? 

 人間椅子のまま固まっている

は、何故か不憫だった。

 それから月日も経ち、そろそろ殿下が、魔法学園か騎士学園かどちらかを、選ばないといけない時期です。

 殿下からはどっちが良いか私に質問がありましたが、殿下が選んだ答えが正しいと伝えました。

 まあ。

 正しくは悩んで選ぶ行為が、殿下の為になるですかね。

 他人の意見を聞くのも大事ですが、決めるのは殿下の意思で決めないといけません。

 殿下はこれから、様々な決定を繰り返して行くのですから。

 ある日、殿下を起こしに行くと机の上に私宛の手紙がありました。

 ああ。

 殿下自ら私に手紙を(したた)めるとは。

 なんと畏れ多い。

 私はその手紙を読む誘惑に勝てませんでした。

 どきどき。


 ビクター・シュトロゲンへ

 旅立つ不幸をお許し下さい。

 僕は強くなる為に旅にでます。

 今まで本当にありがとう。

 追伸、体には気を付けてね。

 ビクトリアス・エルブリタニアより


 が~ん。

 何だと。

 目の前が、真っ白になった。

 目は開いているのに真っ白。

 どうしたことだ。

 こう言う時は、真っ暗になるんじゃないのか?
 
 殿下、小さい赤ちゃんの頃からお育てした我が君。

 何が起こったと言うんだ。

「殿下。ご説明下さい」

 私は殿下を、

起こして手紙を殿下に見せながら、

問い詰めると、殿下は紅玉の瞳で私をじっと見つめながら、

「ビクター、僕。強くなると決めたんだ。みのがしてください」

 ......熱く、熱く語る殿下。

 臣は殿下が何を言ってるのか理解できません。

 何故理解できないのか、私は何故、殿下の言葉を理解できないのか。

 自問自答を繰り返す。

 しかし、殿下が

事は解る。

 何故か涙が零れ落ちました。

 は。

 その時、全て理解したのです。

ですね? 

なんですね?」

 目頭を押さえながら聞く私を殿下は泰然自若の様で、

「ビクター......。ビクターの言う通り。

だよ。ごめん」

 そう言うと殿下は、部屋を飛び出して行きました。

 やっぱりか、やっぱり

のせいか。

 ふふふふふ。

 その後、殿下を捕獲して縄で縛り誰も部屋に近付かないようにして、私は

の元へ向かったのです。


 怠惰(たいだ)よ。命は無いものと心得よ!

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