第37話 麒麟

文字数 1,566文字

 おいらはパラグラム。

 十の災厄(アンタッチャブル)の一角、《麒麟》パラグラムだ。

 おいらの縄張り霊山《不死山》には掟がある。

 1つ、霊山に冬期の入山はそれを禁ずべし。

 1つ、霊山で騒ぎを起こすを禁ずべし。

 1つ、霊山に入山し霊山のものを持ち出すを禁ずべし。

 1つ、霊山に入山し麒麟と武競べするは唯1人で行うべし。

 1つ、霊山では一切の殺生を禁ずべし。

 この霊山5ヶ条を破りしものには神々の祟りあり。合掌。


 この神々の祟りの祟り何だけど、おいらに関係するのは1つ、霊山に入山し麒麟と武競べするは唯1人で行うべしって奴だ。

 それ以外は神々が

を禁忌を破ったものに付与してる。

 今日も今日とて、おいらと武競べする為だけに地元の侍ちゅうものが来てる。でも大概が神々の呪いにかかり虫の息だ。

 霊山5ヶ条の1つ、霊山では

を禁ずべし。

 これっておいら、神々の引っ掛け問題だと思う。

 今日おいらの前にいる侍も、霊山に入山して魔物とか他の生き物を殺さずに注意して来たんだと思う。

 でも、もう虫の息だ。

 だって、おいらのいる頂上まで来るのに必ず某かの

をしているからだ。

を踏み付け

を追い払う。

 ここ霊山の草花や虫達は簡単にお亡くなりになる。

 草花は踏み付けると段々と枯れてお亡くなりになる。

 虫達は触れると段々弱ってお亡くなりになる。合掌。

 おいらは思う。

 1つ、霊山に冬期の入山はそれを禁ずべし。

 これは積雪で草花を踏む危険を回避される。

 これは寒い冬期に殆どの虫達は眠って活動しないから、虫達に触れる危険を回避される。

 これを嫌った神々の罠だ。

 1つの殺生をする度に、各種の呪いにかかっていく。

 1つの殺生をする度に、各種の呪いの効果が上がる。

 おいらのいる頂上に着いた時には、みんなもう虫の息だ。

 だからいつも鎧袖一触で、みんなお亡くなりになる。合掌。

 それに1つ、霊山で騒ぎを起こすを禁ずべし。

 これも神々の罠だ。

 おいらのいる頂上に着くまでに霊山の魔物達と交戦せずに逃げたとしても、魔物達は霊山に入山した侵入者を攻撃する使命を負っている。

 逃亡劇が禁忌の

に触れ神々の呪いにかかる。

 なんて神々の罠だ。合掌。

 それと1つ、霊山に入山し霊山のものを持ち出すを禁ずべし。

 これも1つの引っ掛け問題なんだ。

 これにも、

がある。

 え、知りたい? おいら教えないよ、内緒だからね。

 まあ、それでもみんな霊山に入山し各種素材を持ち帰ろうとする。

 でも、霊山のものは

をしないと全て薬効がなくなる。

 そう霊山の草花と虫達は古より、

を治す薬の素材なんだ。

 それを求めて、呪いにかかってもみんな持ち帰ろうとする。

 この神々の罠は人々の希望を餌にしているから酷いかと言うとおいらはそうは思わない。

 何故なら、全て

と言う神々の救いがあるからだ。

 ああ、最後においらの1つ、霊山に入山し麒麟と武競べするは唯1人で行うべし。

 これな! おいらのだけ禁ずって文言がないのが味噌だ。

 おいらと武競べするものは沢山いても

問題ない。

 ただ、おいらと武競べする生物の数の分だけ、おいらはおいらに掛かる

から解き放たれる。

 おいらの使命である“おいらの禁忌を破りし生物に制裁を加える”は、おいらと武競べする生物の数の分だけ制裁の大きさ広さ強さの段階が上がると言う、神々最大の引っ掛け問題だ。合掌。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み