第162話 ザッドス王国

文字数 977文字

 我はジルクレール・ザッドス。

 ザッドス王国の国王である。



 隣国ラグーン王国が揺れている。

 新王に代替わりした国に、よく起こるお家騒動か?

 不用意に動くと墓穴を掘る。

 慎重過ぎても、掴み獲れない。

 要は、状況を冷静に判断して、機を逃さずに、決断を下せば良い。



「陛下、如何(いかが)いたしますか?」

 ラグーンの新王が、何をとち狂ったかテスラ王国へ軍を進めているらしい。

 あの戦闘民族と戦うと言うのか?

 阿呆なのか? 何もしなければ、何もしない竜の民を攻めるとは、・・・・・・

 はてさて、困ったものよのう。



「陛下、如何(いかが)いたしますか?」

 クナーン山脈が噴火の兆しだと?

 山脈の脈動で、クナーン山道が埋まったか、ラグーンは軍を引き返したと。

 ふむ、今は未だ時ではないようだ。



「陛下、如何(いかが)いたしますか?」

 ラグーンの実情が判明してきた。

 何でも第3王子だった王弟が勝手に軍を進めて、失脚し幽閉されたとか。

 王の命を聞かない親族か、困ったものようのう。

 当王家にも一人いるので、頭が痛い。

 ラグーンの新王は、情け深いのか、其れとも優しいのか、どちらにしても情に流される人物だと言うことだ。

 甘い、甘いのう。

 此れは、美味しく頂けるかも知れんのう。



「陛下、ご報告が! コマ王国が、ベルウル王国に制圧されました!」

「して、他国の動静は?」

 ほう、流石は蛮族王と言われるゴウトメル・ベリウル。

 機は逃さないか。

 斯くありたいものだ。

「同盟国のテスラ王国も動く気配はありません!」

 其れはそうだろう、王都が落ちるのが早過ぎた。

 せめて王都が無事であれば、テスラ王国も約定を以て、ベリウルを退けたものを。

 此れはベリウルを褒めるべきだ。

 機を逃さない準備を常にしていたことを。

 我も斯くあらねば。



「陛下、大変です! ジメルナール様が、民と揉めているとの事です!」

 くっ、又か! 愚弟が!

「至急、レイメールに対処をさせろ!」

 我は、頭痛の種である愚弟を、我が国の誇る将軍に対処を丸投げしたのだった。







 我はジルクレール・ザッドス。

 ザッドス王国の国王である。
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