第5話 変態

文字数 2,241文字

 双剣の先生に習い始めて実感したことは、才能って技術の土台があって初めて才能を発揮できるってこと。

 それも目に見えて、実感できるってこと。

 どんどんやれることが増えて、毎日が凄く楽しい。

 先生は僕に色んなことを教えてくれる。

 土下座って、求愛の基本なんだね。

 最近はメイドのメアリーだけじゃなくて、

メイド長のアレサにも土下座していた。

 先生? 

アレサだよ? 

 それにアレサは、200歳超えてるよ? 

 先生って年上が好みなの? 

 メアリーが睨んでるよ? 大丈夫? 

 でも恋愛は自由だから、何も言わないよ僕?

 今日は、実地訓練だと数日前から言われていた日だ。

 それも離宮の誰にも言わずに内緒だって。

 選ぶのは、僕。

 強く成りたいなら、来いと言われた。

 答えは、既に出ていた。

 どきどきする。

 初めての経験だ。

 先生から教えられた通りの道順と手順で、城を抜け出した。

 先生に合流すると、今日の決まりごとを言われた。

「殿下。敵は強敵です。必ず守って下さい。命に関わります」

 こんな真剣な顔の先生は、初日に僕に覚悟を聞いた時以来、見たことなかった。

 それ程の相手なのか。

 僕は緊張しながらも、真剣に聞いた。

「今日は一日中、私のことは『お兄ちゃん』とお呼び下さい。私は殿下を弟と呼びますので、よろしいですか?」

 僕は、はいって頷いた。

 そうだよね。

 誰に聞かれるか解らないからね。

 第3皇子ってばれると不味いよね。

 うん。解ってるよ、僕。

 先生は帝都の外門に向かわずに、なんか独特な雰囲気の建物の前で、

「弟よ! 行くぞ!」

 って気合いを入れて、扉を叩いた。

 中に入ると執事が腰の剣を預かるって言ってきた。

 え。僕、剣が2つないと戦えないんだけど。

 先生は執事に剣を預けて、僕の耳許で、

「弟よ。精神鍛練だ」

 と囁いてきたので、僕も剣を預けた。

 先生と一緒に執事に先導され、大きな扉を開けると綺麗なお姉さん達が、僕達を待ち構えていたんだ。

「きゃあぁぁぁ! エルさまぁぁぁ~!」

 先生は、人気者だった。

「エルさま、こちらのお子さまは誰ですの?」

「私の弟だ。可愛がってくれ」

「「「きゃあぁぁぁ!可愛い~!」」」

 お姉さん達に揉みくちゃにされる僕。

 いい匂いと柔らかい感触に、

懐かしさを感じた。

 はっ。いけない。

 気をしっかりもたないと。

 城の近衛兵も言っていた。

 女は魔物だって。

 確かに廊下で聞いたんだ。

 僕は負けないぞ。

『ぽ~ん♪ ...個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》はスキル《魅了耐性Ⅰ》を獲得しました!』

 シスがそう言って、教えてくれた。

 やった~新しいスキルだ。

 先生、僕やったよ。

 その後、スキルのレベルが上がり続けた。

 凄い。

 先生、凄い所だね。

 此処。

 でも、真の強敵が現れたんだ。

「あら。エルさま。いらっしゃいませ。」

 って物凄く綺麗なお姉さんが先生に話し掛けたんだ。

 それから3人でお姉さんの部屋へ行ったんだけど、なんか頭がぼぉ~っとしてきて戸惑ったよ僕。

 あ。また魅了耐性スキルのレベルが上がった。

 部屋に入ると凄く綺麗なお姉さんは、先生にこう言ったんだ。

「この変態が! いつまで待たせるの?」

 って、先生の胸ぐらを掴んでそう言ったんだ。

 先生は嬉しそうに、

「遅くなりました。女王さま」

 って、言って即座に両膝を絨毯に付いて、凄く綺麗なお姉さんの腰に顔を埋めたんだ。

 するとお姉さんは、何処からか鞭を持ち出し先生を突き飛ばして叩いたんだ。

 先生? 何故喜んでるの? 踏まれると嬉しいの? 

 はっ。

 その時、気付いたんだ。

 先生が、お姉さんに魅了されたんだって。

 そして......先生はお姉さんの椅子になっていた。

 先生を助けないと。

 だって先生は、敵は強敵だ。

 必ず守って下さいって。

 先生は僕の成長の為に、自分の尊厳を賭けてるんだ。

 僕は、お姉さんと戦うんだ。

「こんな変態にこんな可愛い弟がいるなんて、お姉さんビックリしたわ」

 ゴクリ。変態? 今までの先生の行動を走馬灯のように思い出した......。

 ブルブル、ブルブル僕は心の中で首を振る。

 惑わされるものか。

 違うよね、先生? 

 でも双剣を持っていない僕が、お姉さんに勝てるのか? 

 シスお願い。

 僕どうしたらいいの? 助けて、シス!

『ビズ。そのサキュバスの腰に抱きついて、顔を見上げて

言うのよ!』

 シスはいつも助言をくれる。

 く。恥ずかしい。

 恥ずかしいよ、シス。

 でも。

 僕ならやれる。

 やってやる。

 僕はお姉さんの腰に抱きつき、そして、見上げてこう呟いた。

「おい......僕の奴隷になれ!」

「は...はい(か...可愛い♥)」

 お姉さんは真っ赤な顔で、そう僕に言ったんだ。


『ずきゅ~ん♪ ...個体名《ダリア・ベクシス》の個体名《ビクトリアス・エルブリタニア》への服従度が上がりました! ...上がりました! ...上がりました!』


 
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