第132話 演じきる!

文字数 1,124文字

 我はシル・ミケラン。

 シルフィの演劇の役者だ。

 ある酒場で、演劇の練習の為に【稀代の革命家】を演じたら、大変に不味い事態になった。

 運悪く、その酒場に北西諸国のシルフィ族の王子達がいたからだ。

 まさか、私の話を真に受けて、本当に革命を起こすなど、悪い冗談にしか聞こえない。

 何度も私は言ったんだ。

 私は稀代の革命家でも、軍略家でもない、しがない演劇の役者だと。

 誰も私の言うことを信じてはくれなかった。

 役者を隠れ蓑にした革命家であり、軍略家と思われている。

 何故だ、私の稀代の革命家の言うことは信じるのに、私の本当の言葉を信用しない。

 訳が解らない。

 私が、自分は只の役者だと言う度に、「ははは、軍師殿は酔いが廻ったらしい」と言われる。

 そんな私は、酒を飲んで憂さを晴らす、すると次第に【酔いどれ軍師】と評判になる始末。

 私はどうやら、【稀代の革命家】・【酔いどれ軍師】と勘違いされているようだった。

 まあ、行く着くとこまで行こう。

 私は諦めが肝心と知っている。

 私は演劇の天才だと自負している。

 ならば、最後まで、劇の幕が降りるまで、役を演じきって見せよう!

 

「ミケラン殿、イルガリアでの計略【ネズミ落とし】が成功したとの報せが来ております!」

「ミケラン殿、ノリスでの計略【川の流れのように】が成功したとの報せが来ております!」

「ミケラン殿、タックロでの計略【頭を取れ】が成功したとの報せが来ております!」

「ミケラン殿、グトネスでの計略【美人局】が成功したとの報せが来ております!」

「ミケラン殿、ダブリンでの計略【ハエ叩き】が成功したとの報せが来ております!」

「ミケラン殿、ゲオアでの計略【流し目】が成功したとの報せが来ております!」

「ミケラン殿、ピクルでの計略【隣の芝】が成功したとの報せが来ております!」

 嘘ぉ~! 全部成功してるじゃないですか?

 あの酔いに任せた計略が成功するなんて、なんてことだ!

 イルガリア王国に始まり、ノリス王国、タックロ王国、グトネス公国、ダブリン王国、ゲオア伯国、ピクル王国と立て続けに計略が決まった。

 ああ、飲まずにはやってられない。

 誰も、私の飲酒を咎めない。

 只、私が自分の境遇に怯えて、「私は只の役者だ~! 違うんだ、革命家でも軍略家でもないんだ~!」と訴えると、酒が取り上げられ強制的に眠らされる。



 違うんだ、私は革命家でも、軍略家でもないんだ! 只の役者なんだ~!

 誰か私の言うことを信じてくれ~!



 私は今日も演じている【稀代の革命軍略家】を......
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