第142話 シルフィは風に舞い、化物は躍る!

文字数 1,235文字

 私はガルバルバ・イルガリア。

 インルガリア王国の

第1王子だ。

 私は、軍師シル・ミケラン殿の謀りごと通り、魔結晶の誘爆を起こした。

 我が師アイスナルド・ゼークド伯と其の軍勢を道連れにして。

 

「此処は何処だ? 私は何故、生きている?」

「やっと起きたか、不肖の弟子よ?」

 懐かしい、もう二度と聞けないと思っていた声が私を迎える。

「お師様、申し訳ございません!」

 私は、重く怠い身体を起こし、我が師に土下座で謝罪した。

 勿論、許されるとは思っていない。

 自分の起こした結果で、多くの者達が死んだ。

 罪も無い者達も死んだ。

 全て私の我が儘故。

 私は我が師からの叱責も、全て受ける気でいた。

「ガルバ、そう呼ぶぞ? 理由は何だ?」

 我が師は、私に今回の理由を尋ねる。

「全ては私の我が儘故で、ございます! 我が父を、王の鎖から解き放ちたかった! 只、其れ7だけの為に、多くの者達を巻き込み、死なせた罪は全て私にあります! どうぞ、お好きなようにお裁き下さい!」

 私は馬鹿正直に、心の内を晒す。

 飾る言葉も、言い訳も無用。

 そんな私を見つめる我が師の目は、何故か優しく、そして厳しく、相反する色合いを絡ませていた。

「此処は、アクリオン王国。カスタクルス辺境伯領だ。我らは、此処で療養している」

「アクリオン王国? ヒカノ城砦から、かなり離れていますが、一体誰が私達を?」

 私の困惑に、我が師は、簡単に答えた。

「我らを助けてくれたのは、エルブリタニア帝国第3皇子、ビクトリアス・エルブリタニア殿下。我らを此処まで運んでくれたのも、殿下の配下の方達だ。呉々も失礼の無いようにな?」

 エルブリタニア帝国が? 第3皇子が? 何故?

「第3皇子が言うには、死ぬには惜しい。もし良ければ殿下達と行動を共にしないかと言われた。傷が癒えるまで考えて、自由に判断して良いそうだ」

 第3皇子に、何の得があるのだ? 

「お師様、我らが対峙した日より、何日が経ったのですか? 反乱の動静、如何に?」

「あれから1ヶ月が経っている。私も目覚めたのは、つい最近なのだ!」

 な、何と! 1ヶ月も経っているだと! 反乱は、父はどうなったのだ?

「反乱は成功した。イルガリア王国も他の内乱が起きた国々もな。数日すればイルガリア共和国の建国だそうだ。陛下は、もう元陛下になるのか、アルは元気だ。建国式典に参加してから、旅に出るらしい」

 そ、そうか! 反乱は成功したのか! 此れで父上は自由の身だ!

 旅に出るか、うんうん、旅は父上の永年の夢だ。

 私は、我が師の言葉を聞き、自然と泪が溢れ落ちたのだった。







 未来を捨てた愚か者に、未来を生きる資格はあるのか?

 私は如何したら良いんだ?


 私はガルバルバ・イルガリア。

 後悔はしても、自分の罪から逃げないシルフィだ。
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