第91話 西方三国

文字数 1,287文字

「待たれよ! その者は我が追いし者だ! その者を渡して貰おう!」

 百数十人の部隊に囲まれている僕は思う。

 シス、この人助けても本当に大丈夫なの?

『ビズ、蹴散らしなさい! この者は後々必ずビズの為になる人物なの! やってお仕舞い!』

 目に見えないはずのシスが、フンスと鼻息荒く僕に命じる。

 解ったよ、シス!

 僕は部隊通信で皆に伝える。

『全員気絶させて、高速離脱するよ!』

『『『了解!』』』

 僕は指揮官の男の鎧の継ぎ目に剣の柄を叩き込み意識を刈り取った。

 僕に従う皆も、気負うことなくあっさりと百数十名を

させる。

 現在、僕達はリゲル王国経由でレクリア王国に

している。

 国境を越えようにもその国境を護るべきレクリア王国の部隊が存在しない。

 まあ、既に国が陥落しているんだけどね。

 スピカ王国とカペラ王国の連合軍に依って、レクリア王国は王都を陥落させられた。

 何故、そんなことが解るかって?

 アルグリア大陸の勢力図が変更されたり、何かあれば随時にシスが教えてくれる。

 脳内の浮かぶ勢力地図も変更されるしね。

 勿論レクリア王国の表示が在った勢力図は、

と変更されている。

 シス曰く、古の西方王国で元々レクリアとナリス・ミダスの西方三国がクローマ王国と呼ばれていたんだって。

 800年ほど前の王位継承時に国を割って今の西方三国になったそうだ。

 王位継承か...エルブリタニア帝国には元老院と言う皇帝選出機関がある。

 僕の上には2人の兄様がいる。

 名将バレリアス兄様、天才魔術師シュトリアス兄様...うん、次期皇帝はこの2人のうちのどちらかだ。

 なので僕は気楽に武者修行をしていられる。

 皇帝なんかになったら、僕とシスの夢の達成は難しくなる。

 ローゼを助けた件で元老院に嫌われた僕には次期皇帝選出はどうでもいいことだ。


「くっ、ここは何処だ? 貴方達は一体何者だ?」

 助けた男が意識を取り戻した。

 その第一声がこれだ。

 それはないんじゃないかな?

「我らは旅の者だ。貴殿はカペラ軍に追われて倒れていた。貴殿を助けたのは、そこのお方だ」

 レディが男に状況説明をしている。

 この男の人は、レクリア王国の銀狐騎士団所属の騎士だ。

 僕の能力で、聞かなくてもある程度の情報は解る。


「それは忝い。ご無礼をしました、お許し下さい」

 男の人は、即座に状況を把握して僕達に謝罪した。

 うん、凄い人だ。

 自分が悪いと思ったら謝る。

 それが出来るこの人は凄い人だ。

 この僕達が助けたこの凄い人の名は、ジューダス・レイピース。

 人物説明欄には、西方四剣聖の1人で《隻眼の狐》と呼ばれる剣の達人で鉄壁の名将って記載されている。


 僕はその人がどんな人か頭の中で、その人の情報欄を見れば

は解るんだ。

 シスは僕の能力を“ゲームシステム”って呼んでいる。

 変な名前だ...。

 
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