第118話 カリダドの聖騎士
文字数 2,090文字
私はジクミーロ・ランスロット。
カリダドの聖騎士で、現在『正義の審問官』の職務中だ。
この度のことを一言で言えば、理不尽極まりない暴挙と言って良いだろう。
一国の、それも狂国アッバースの騎士団長を引き抜くとは、常識がないどころではない。
アッバースに張り手を叩き込んで、喧嘩を売っているに等しい。
それ以外に考えようがない。
正義の剣を振るうアッバースに、理不尽の一撃を加えた件の第3皇子が私の前にいる。
どこから見ても、エルフの少年じゃないか?
それにしては、アッバースの騎士達に囲まれて、威圧をこれほどかと言うぐらい浴びている筈なのに、全く臆したところがない。
それも、たった1人でアッバースの王城に従者も連れずに来るとは、何たる剛毅な少年だ。
オルスカの獣王を降し、西方諸国連合軍25000を敗走させ、アッバースの巨神騎士団団長を降した神童とは一体?
「ふははははは! 貴殿がエルブリタニア帝国第3皇子ビクトリアス・エルブリタニア殿か?」
玉座の間ではなく、直接王城の中庭に通された件の第3皇子に、挨拶をさせる間もなく問い掛けたハミルクリニカ陛下。
む、やはり冷静な判断が出来ないくらいに激高しているようだ。
確かに第3皇子の行為は、アッバースの正義に反するものだ。
だが、正義の審判に依り決定されたことも事実である。
正義の審判を否定することはアッバースには、否、ジャイアントには出来ない。
誇りを胸に戦うジャイアントに取って、先人達が刻んできた歴史こそ、まさに誇りであった。
「はっ! 初めて御意を得ます、ハミルクリニカ陛下。私はエルブリタニア帝国の皇子ビクトリアス・エルブリタニアでございます」
片膝で跪き、貴人の礼を取る少年。
ほう、無法者ではないのか?
礼儀は心得ているようだ。
「挨拶など不要だ! 我は貴殿との“正義の審判”を所望したいが、如何かな?」
完全武装のハミルクリニカ陛下が大剣を片手で持ち、少年にその切っ先を突きつける!
ふむ、もはや礼も何もないな。
穏便にすませる気など露ほどもあるまい。
確かに、ご自身の剣術指南役を引き抜かれたんだ、然もあらん。
「はっ! その申し出お受けします。ところで、一体何の審判をされるのですか?」
ぶっ!
思わず立会人の立場で、吹いてしまうところだった。
おお、おお、少年の周りを取り囲む騎士達の殺気が膨れ上がったぞ!
ハミルクリニカ陛下の 顳顬 に、青筋が浮き上がる...。
この少年は正気なのか? それとも頭が狂っているのか?
この状況で、アッバース王国そのものを煽るとは、命知らずどころではないぞ?
ゴクリ、...私でも明白 な殺意の威圧を肌で感じるだけで、心が、肌が泡立つ!
「あ、あ、アジナート卿の貴殿への臣従の審判だ! 我が勝てば、我の言こそが正義! ここはエルブニタニアではないのだぞ、小僧! 如何する?」
ふむ、怒りの想いで言葉使いが最早 、帝国の皇子に向ける礼節もなくなった。
「はっ! 畏まりました。その申し出お受けします。ところで、陛下お一人ですか?」
ぶっ、ぶ!
あ、危ない! またもや、吹き出してしまうところだった!
この少年は、只者ではない。
只者である訳がない。
あ、ハミルクリニカ陛下が...開始の合図も待たずに少年に斬り掛かった!?
「くっ!」
私は、この度の“正義の審判”の立会人に指名された。
故に、卑怯な振る舞いは喩えハミルクリニカ陛下でも許すことは出来ない!
私はハミルクリニカ陛下の大剣の一撃を、我が剣で往なした。
「ハミルクリニカ陛下! 立会人である私の合図なく相手に斬り掛かるとは、“正義の審判”を汚すおつもりか?」
私の問い掛けにハミルクリニカ陛下は、全く心揺らされることもなく、憮然とした表情で少年を睨み付けていた。
「ランスロット卿、失礼した。だが、我が正義に一片の曇りもない! 無礼な小僧に正義の剣を! さあ、ランスロット卿! 合図を!」
ハミルクリニカ陛下は、全く悪びれることもない。
己の正義を疑わない、それもアッバースなのであろう。
危ういな、故にアッバースは狂国と呼ばれるのだ。
致し方ないな、為るようにしか為らん!
エルフの少年よ、恨むなら己自身の言動を恨め!
「正義の審判を始めます! 私はジクミーロ・ランスロット、今回の立会人を務めます! それではアッバース王ハミルクリニカ陛下とエルブリタニア帝国皇子ビクトリアス殿下の決闘を始めます! 始め!」
私の号令で、一陣の颶風と化したアッバースの狂戦士であるハミルクリニカ陛下の一撃で、少年諸共に中庭地面が弾け飛んだ。
少年よ、安らかに眠れ!
私はジクミーロ・ランスロット。
正義の審判の立会人にして、カリダドの聖騎士だ。
カリダドの聖騎士で、現在『正義の審問官』の職務中だ。
この度のことを一言で言えば、理不尽極まりない暴挙と言って良いだろう。
一国の、それも狂国アッバースの騎士団長を引き抜くとは、常識がないどころではない。
アッバースに張り手を叩き込んで、喧嘩を売っているに等しい。
それ以外に考えようがない。
正義の剣を振るうアッバースに、理不尽の一撃を加えた件の第3皇子が私の前にいる。
どこから見ても、エルフの少年じゃないか?
それにしては、アッバースの騎士達に囲まれて、威圧をこれほどかと言うぐらい浴びている筈なのに、全く臆したところがない。
それも、たった1人でアッバースの王城に従者も連れずに来るとは、何たる剛毅な少年だ。
オルスカの獣王を降し、西方諸国連合軍25000を敗走させ、アッバースの巨神騎士団団長を降した神童とは一体?
「ふははははは! 貴殿がエルブリタニア帝国第3皇子ビクトリアス・エルブリタニア殿か?」
玉座の間ではなく、直接王城の中庭に通された件の第3皇子に、挨拶をさせる間もなく問い掛けたハミルクリニカ陛下。
む、やはり冷静な判断が出来ないくらいに激高しているようだ。
確かに第3皇子の行為は、アッバースの正義に反するものだ。
だが、正義の審判に依り決定されたことも事実である。
正義の審判を否定することはアッバースには、否、ジャイアントには出来ない。
誇りを胸に戦うジャイアントに取って、先人達が刻んできた歴史こそ、まさに誇りであった。
「はっ! 初めて御意を得ます、ハミルクリニカ陛下。私はエルブリタニア帝国の皇子ビクトリアス・エルブリタニアでございます」
片膝で跪き、貴人の礼を取る少年。
ほう、無法者ではないのか?
礼儀は心得ているようだ。
「挨拶など不要だ! 我は貴殿との“正義の審判”を所望したいが、如何かな?」
完全武装のハミルクリニカ陛下が大剣を片手で持ち、少年にその切っ先を突きつける!
ふむ、もはや礼も何もないな。
穏便にすませる気など露ほどもあるまい。
確かに、ご自身の剣術指南役を引き抜かれたんだ、然もあらん。
「はっ! その申し出お受けします。ところで、一体何の審判をされるのですか?」
ぶっ!
思わず立会人の立場で、吹いてしまうところだった。
おお、おお、少年の周りを取り囲む騎士達の殺気が膨れ上がったぞ!
ハミルクリニカ陛下の
この少年は正気なのか? それとも頭が狂っているのか?
この状況で、アッバース王国そのものを煽るとは、命知らずどころではないぞ?
ゴクリ、...私でも
「あ、あ、アジナート卿の貴殿への臣従の審判だ! 我が勝てば、我の言こそが正義! ここはエルブニタニアではないのだぞ、小僧! 如何する?」
ふむ、怒りの想いで言葉使いが
「はっ! 畏まりました。その申し出お受けします。ところで、陛下お一人ですか?」
ぶっ、ぶ!
あ、危ない! またもや、吹き出してしまうところだった!
この少年は、只者ではない。
只者である訳がない。
あ、ハミルクリニカ陛下が...開始の合図も待たずに少年に斬り掛かった!?
「くっ!」
私は、この度の“正義の審判”の立会人に指名された。
故に、卑怯な振る舞いは喩えハミルクリニカ陛下でも許すことは出来ない!
私はハミルクリニカ陛下の大剣の一撃を、我が剣で往なした。
「ハミルクリニカ陛下! 立会人である私の合図なく相手に斬り掛かるとは、“正義の審判”を汚すおつもりか?」
私の問い掛けにハミルクリニカ陛下は、全く心揺らされることもなく、憮然とした表情で少年を睨み付けていた。
「ランスロット卿、失礼した。だが、我が正義に一片の曇りもない! 無礼な小僧に正義の剣を! さあ、ランスロット卿! 合図を!」
ハミルクリニカ陛下は、全く悪びれることもない。
己の正義を疑わない、それもアッバースなのであろう。
危ういな、故にアッバースは狂国と呼ばれるのだ。
致し方ないな、為るようにしか為らん!
エルフの少年よ、恨むなら己自身の言動を恨め!
「正義の審判を始めます! 私はジクミーロ・ランスロット、今回の立会人を務めます! それではアッバース王ハミルクリニカ陛下とエルブリタニア帝国皇子ビクトリアス殿下の決闘を始めます! 始め!」
私の号令で、一陣の颶風と化したアッバースの狂戦士であるハミルクリニカ陛下の一撃で、少年諸共に中庭地面が弾け飛んだ。
少年よ、安らかに眠れ!
私はジクミーロ・ランスロット。
正義の審判の立会人にして、カリダドの聖騎士だ。